欧米食で変化した腸内細菌叢が肥満の原因に―米研究
2011年08月05日 10:24
【ワシントン】米ワシントン大学(WUSTL)のPeter J. Turnbaugh氏らは,マウスを用いた実験を行い,高脂肪・高炭水化物食(いわゆる欧米食)は腸内の生態系に影響を及ぼし,肥満になりやすい恒久的な変化をもたらすと、米科学誌「Science Translational Medicine」(2009; 1: 6ra14)に発表した。人間の腸内にある細菌叢(そう)は,肥満を理解し治療法を探す上で、考慮すべき新たな要因となることが分かったという。
無菌マウスに人間の細菌叢を移植
人間の肥満には,制御できない遺伝的、文化的、環境的などさまざまな要素が関係するため,引き金となる要因を断定することが難しい。近年の研究から,その要素の1つとして腸内細菌叢が新たに加わえられている。
腸内細菌叢とは,人間の腸に定着し,腸内環境を保つ上で重要な役割を担う微生物群集のこと。"生きる臓器"と呼ばれる腸内細菌叢は無数の微生物で構成されており,本来ならば消化できない食物の分解や吸収促進など重要な機能を持ち,宿主である人間の役に立っている。
Turnbaugh氏らは今回の研究で,無菌マウスの体内に人間の便から得られた微生物群集を移植。このマウスに,肥満を促進すると考えられる高脂肪・高炭水化物食を与えたところ,低脂肪食を与えたマウスと比べて,腸内の微生物群集に急速な変化が現れ,体脂肪も増加した。
また同氏らは、高脂肪食を与えたマウスから採取した微生物叢を、そのまま新たに別の無菌マウスに導入した。その結果,これらのマウスに低脂肪食を与えても,体脂肪を蓄積するようになることが判明した。
以上の知見から,腸内細菌叢の役割が複雑で,肥満につながる要素でもあることが示されたという。
Medical Tribune紙 2010年1月7日号 掲載