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葉酸とビタミンB12の大量摂取に注意―ノルウェー

 2011年08月05日 10:38

 【シカゴ】ノルウェー・ハウケランド大学病院のMarta Ebbing氏らは,葉酸(ビタミンB9)とビタミンB12を大量に摂取した場合,がんやすべての原因による死亡(全死亡)のリスクが上昇するとの研究結果を、米医学誌「JAMA」(2009; 302: 2119-2126)に発表した。

ビタミンB群の治療を行った試験を検討

 胎児の神経管欠損症の発生率を減少させるため、世界中で妊婦の葉酸摂取が推奨されており、食品への葉酸強化を義務付けている国も少なくない。その一方で、葉酸の摂取と発がんの関連を指摘する研究は多数報告されている。なお、今回の研究が行われたノルウェーでは食品への葉酸強化が義務付けられていないため、葉酸の作用を検討するのに適しているという。

 Ebbing氏らは今回,1998~2005年に心臓病(虚血性心疾患)患者6,837人にビタミンB類またはプラセボ(偽薬)を投与し,2007年12月31日まで追跡調査した2件のランダム化比較試験の結果を解析し,追跡調査を実施した。

 2試験の参加者は、(1)葉酸(1日当たり0.8ミリグラム)+ビタミンB12(同0.4ミリグラム)+ビタミンB6(同40ミリグラム)群...1,708例、(2)葉酸(同0.8ミリグラム)+ビタミンB12(同0.4ミリグラム)群...1,703例、(3)ビタミンB6(同40ミリグラム)単独群...1,705例、(4)プラセボ群...1,721例―にランダムに割り付けられた。試験期間中,(1)群と(2)群では,(3)群と(4)群に比べ葉酸の血清中の濃度が6倍以上上昇した。なお、わが国の葉酸推奨量は、妊娠を計画している女性に対し、1日当たり0.4ミリグラム以上とされている。

がんリスクは21%上昇

 治療期間(中央値39か月)と試験後の観察期間(同38か月)の終了時点で,葉酸+ビタミンB12を投与されなかった(3)群と(4)群のうち288例(8.4%)が,がんの診断を受けていた。一方,(1)群と(2)群では341例(10.0%)ががんと診断されており,葉酸+ビタミンB12を投与された群のがんリスクが21%上昇していたことになる。

 がんによる死亡は,葉酸+ビタミンB12投与を受けなかった群では合計100例(2.9%)だったのに対して,受けた群では136例(4.0%)で,がん死亡リスクは38%上昇した。全死亡率は,葉酸+ビタミンB12投与群の16.1%に対して,投与を受けなかった群では13.8%だった。

がん予防には長期研究が必要

 Ebbing博士らは「このような結果をもたらしたのは,葉酸+ビタミンB12の投与群で肺がんの割合が高いことが大きな要因となっている。ビタミンB6はどんな影響とも関連しなかった」と説明。「今回の結果について他の集団でも確認する必要があるが,栄養補助食品や葉酸強化食品から大量に葉酸を摂取することに対し、安全性を監視すべきことが示されたと言える」と述べた。

 米ワシントン大学のBettina F. Drake氏らは,同誌の付随論評(2009; 302: 2152-2153)で「Ebbing氏らの報告は重要な短期的データだが,葉酸強化が公衆衛生にもたらす長期的な利益を否定するものではない」としている。

※ランダム化比較試験......被験者を無作為に処置群と比較対照群に分け、効果を測定する研究手法。

Medical Tribune紙 2010年1月14日号 掲載

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