メニューを開く 検索

トップ »  疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」 »  血液中の鉛濃度が精神疾患を引き起こす―米研究

疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」一覧

血液中の鉛濃度が精神疾患を引き起こす―米研究

 2011年08月05日 10:38

 【シカゴ】米ハーバード大学公衆衛生学のMaryse F. Bouchard氏らは、血液中の鉛濃度が高い成人は精神疾患を発症しやすいと米医学誌「Archives of General Psychiatry」(2009; 66: 1313-1319)に発表した。血液中の鉛濃度が低い人に比べ、高い人ではパニック障害になる割合が約5倍になったという。

非喫煙者でさらにリスク上昇

 鉛はよく知られた神経毒で、空気や土壌、ほこり、水など環境中の至るところに存在する。ガソリンの脱鉛は人々の血液中の鉛濃度を劇的に減らしたが、塗料、工業的な工程、陶器、汚染された水などの曝露源は依然として残されている。

 Bouchard氏らは「低濃度の鉛の神経毒作用に関するこれまでの研究では、子宮内と乳幼児期に焦点が合わされていた。また、成人における鉛の神経毒作用については主に職業的な曝露との関連で、一般人口より1けた高い濃度の曝露に関して研究が行われてきた」と述べている。

 同氏らは、1999~2004年に行われた米国の国民保健栄養調査(NHANES)に参加した成人(20~39歳)1,987例のデータを分析。被験者は血液検査のほか、うつ病、パニック障害、全般性不安障害の有無についての聞き取り調査を受けた。

 大うつ病性障害の診断基準を満たした成人は134例(6.7%)、パニック障害は44例(2.2%)、全般性不安障害は47例(2.4%)だった。血液1デシリットル当たりの平均鉛濃度は1.61マイクログラム。血液1デシリットル当たりの鉛濃度を5群に分けた高い方(2.11マイクログラム以上)の人では、低い方(0.7マイクログラム以下)の人に比べ、大うつ病性障害になる割合が2.3倍、パニック障害は4.9倍だった。

 喫煙は血液中の鉛濃度に影響するため、同氏らは628例の喫煙者を除外して追加分析を行った。その結果、非喫煙者では鉛濃度が低い方の人に比べ、高い方の人で大うつ病性障害が2.5倍、パニック障害が8.2倍とリスクはさらに上昇した。

 うつ病やパニック障害に関連するカテコールアミンやセロトニンなどの神経伝達物質は脳内のプロセスに関与しているが、低レベルの鉛曝露はこのプロセスをかく乱させると同氏らは推測。「今回の研究結果から、鉛の神経毒性が一般にほとんどあるいは全くリスクを伴わないと見なされるほどの低レベルであっても、人間の精神に影響する可能性があることが分かった。環境中の鉛曝露を減らすための方策を検討すべき時期に来ている」と結論付けている。

Medical Tribune紙 2010年1月28日号 掲載

ワンクリックアンケート

大阪万博まであと1年

トップ »  疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」 »  血液中の鉛濃度が精神疾患を引き起こす―米研究