【ロンドン】英サリー大学のMike Gill教授らは、英国の交通事故に関する6年分のデータを検討した結果、旅行中の外傷による入院率から見ると、自動車の運転者および同乗者よりも自転車利用者の方が危険であると、英医学誌「Injury Prevention」(2009; 15: 374-378)に発表した。特に夏季は、自転車事故による入院が増加していたという。
自動車よりも自転車旅行の方が危険―英研究
schedule 2011年08月05日 公開
冬季は重度の外傷が多く発生
Gill教授らは、1999~2004年のデータを基に自動車、オートバイ、自転車、徒歩に分けて交通事故による外傷での入院数を算出。さらに、季節ごとの傾向を検討した。
その結果、自動車の運転者および同乗者の入院数は冬に最も多く、夏に最も少なかった(12月は年間月平均の16%増、6月は5%減)。これに対し、成人の自転車事故による入院は夏に最多、冬に最少だった(6月は34%増、12月は27%減)。また、子供の自転車、オートバイも同様の傾向を示した。一方、子供の歩行時の事故による入院率は5月が最多(24%増)で12月が最少(28%減)だったが、成人では12月が最多(33%増)で7月が最少(17%減)となっている。
自転車事故と子供の歩行中の事故が増える4~9月の6年間の入院数は、自動車が3万4,582件だったのに対し、自転車および歩行者は4万4,875件と大幅に上回った。なお、自転車事故による重度の外傷は冬に多く起こる傾向にあったという。
死亡リスクは自動車が圧倒
Gill教授らは「夏のサイクリングは冬と比べて安全であるにもかかわらず、6年間の研究で通算すると、自転車と徒歩の方が自動車に乗るよりも危険度が高くなっていた」と述べ、「研究期間中に自動車で旅行をした人の数は、自転車で旅行をした人の40倍超。自転車で旅行した人の割合が極端に少なかったにもかかわらず、外傷者数にはそこまでの開きはなかった。いずれの季節においても、自動車より自転車のほうが事故のリスクが高いと言える」と結論した。
さらに、肥満対策や環境保護の観点から自転車や徒歩による旅行が望ましいことを認めた上で「外傷による入院率で見た場合、自動車よりも自転車や徒歩で旅行する方が危ないという結果になった。ただし、交通事故による死亡リスクに関しては自動車の方が圧倒的に高い」と説明。「自転車が安全に路上を走れるための対策を、今以上に講じる必要がある」と強調している。
Medical Tribune紙 2010年2月11日号 掲載

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