成人のおたふくかぜ―不妊になる可能性はまれ
2011年08月16日 14:08
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)には、免疫がないと成人も感染する。特に、成人男性で問題となるのが精巣炎の合併。不妊の原因になるが、その可能性は極めてまれのようだ。
症状は子供と同様
おたふくかぜは、ムンプスウイルスによる感染症。5~9歳ころに感染して終生免疫を得るケースが多いが、成人してから感染する人もいる。
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院小児科の加藤達夫教授は「成人の症状も、基本的には子供のケースと大差ありません。片側あるいは両側の耳下腺が腫れて痛み、発熱します。ただし、思春期以降に感染すると、男性では精巣炎を合併するケースが約35%に見られます。また、女性では約5%が卵巣炎を合併します」と説明する。
精巣炎を合併すると精巣が腫れ、極端な場合は痛くて歩けない。こうした症状は通常4~5日で改善されるが、精巣が委縮すると精子が作られなくなって不妊の原因になる。
「精巣炎を合併した人の3分の1は片側だけで済んでいます。両方に起こったケースでも、両方の精巣が委縮して初めて不妊の原因になるので、その可能性は極めて低いと言えます」(同教授)
未発症のケースも
不妊になる可能性はまれとはいえ、全くないわけではない。子供のころにおたふくかぜに感染していないか、感染の記憶が定かでない成人男性は、どのように対応すればよいのか。
「おたふくかぜは不顕性感染と言って、ウイルスに感染しても発症しないケースがあります。感染の有無は、血液検査で抗体を調べると分かります。その結果、感染していないと分かれば、予防接種を受ける方法がありますが、それでは時間と経費がかかるので、最初から予防接種を受けた方がよいでしょう」(加藤教授)
一方、女性の場合は、卵巣炎の合併による不妊の問題はまずない。ただし、成人が子供の病気にかかると重症化しやすいといわれるように、男女とも髄膜炎、急性膵(すい)炎などを合併することもある。過度に神経質になる必要はないが、心配な人は念のために、内科で予防接種を受けた方がよいだろう。
2004年1月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)