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ツタンカーメンの死因は骨の先天異常とマラリアだった

 2011年09月02日 17:13

 エジプト考古最高評議会のZahi Hawass氏らは,古代エジプト王、ツタンカーメンのミイラから組織を採取して遺伝子解析などを行い,死因や血縁関係を明らかにしたことを、2月17日発行の米医学誌「JAMA」(2010; 303: 638-647)に報告した。手足が細長く,女性的な風貌で描かれることの多いツタンカーメンだが、そうした容貌を生じさせる医学的要因は認められなかった。しかし、足の骨には先天異常の家族内集積が認められたという。また,ツタンカーメンを含む4体のミイラからは,マラリアに感染していたことを示す遺伝子が見つかった。同氏らは,骨壊死による歩行困難とマラリア感染がツタンカーメンの死につながったとの見解を示している。

父母のほか胎内死亡した2人の王女の存在も判明

 王墓が手付かずの状態で発見されたツタンカーメンは、歴代エジプト王の中でも最も有名だが,19歳で夭折したとされている。Hawass氏らによると,1922年に考古学者Howard Carterが彼の墓を発見,ミイラや宝物が発掘されたものの,ツタンカーメン自身については最近まであまり多くのことは分かっていなかったという。

 ツタンカーメンならびにその家族の死因については諸説があり,外傷による菌血症,大腿骨骨折による脂肪塞栓,背後からの殴打による殺人,毒殺説などが言われてきた。そのうちのいくつかは、数年前に撮影されたミイラのコンピューター断層撮影(CT)画像から類推されたもののようだ。

 Hawass氏らは今回,ツタンカーメンとその一族とみられる16体のミイラのDNA鑑定,全身のトモグラフィー(X線による断層撮影),CTスキャンなどによる分析を行った。

 DNA鑑定の結果,身元が不明で"年配の女性"と呼ばれていたミイラ「KV35EL」が、アメンホテプⅣ世(アクエンアテン)の母でツタンカーメンの祖母に当たるティイであること,「KV55」のミイラはアメンホテップⅣ世であり,ツタンカーメンの父であることはほぼ間違いなく,母も同定された。ほかにもツタンカーメンには妊娠5カ月,7カ月で胎内死亡した女児2人がいたという。

一族にケーラー病

 古代エジプト絵画ではツタンカーメンやアメンホテップⅣ世が独特の風貌または女性的な体つきをしていたかのように描かれているが,これはあり得ないことで,当時の王族の象徴としての表現にすぎないと同氏らは述べている。実際,絵画にあるような女性化乳房や細長い四肢などを呈するマルファン症候群の証拠は認められなかったという。

 しかし,一族にはケーラー病の家族内集積が認められたほか,ツタンカーメンを含む4体のミイラからは熱帯熱マラリア原虫の遺伝子が検出された。Hawass氏はケーラー病そのものが直接の死因ではないものの,ツタンカーメンに関してはケーラー病による足の無腐性骨壊死とマラリア感染の合併が死につながったのではないかとしている。

 鑑定からは右足の指の欠損と左足に内反足が判明し,骨壊死による足の痛みがあったとみられている。同氏は,彼の墓からはステッキや死の直前に服用していた薬物が発見されていることなどから,マラリアに侵され体力の低下を来し,転倒したことで致死的な状態となったのではないかと考察している。

 同氏は今回の検討を「古代エジプト王朝の分子遺伝子系図学,病原体の古ゲノミクス研究に対する新たなアプローチを示唆できた。さらに検討を重ねれば,自然科学,生命科学,文化科学,人類学や医学などさまざまな領域を結合した"分子エジプト学(molecular Egyptology)"という新たな学問体系が生まれるかもしれない」と評価,現代科学テクノロジーと考古学の融合への夢が膨らむコメントを寄せている。

(MT Pro 2010年2月18日 掲載)

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