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ワインが健康に良いはウソ? 米研究が"都市伝説"暴く

 2012年01月19日 11:31

 酒にまつわる怪しい都市伝説は多い。その1つが、ワインは他のアルコール飲料より健康に良いというものだ。実際のところどうなのだろう。米テキサス大学のCharles Holahan氏らが、米医学誌「Journal of Studies on Alcohol and Drugs」の1月号(2012; 73: 80-88)に発表した論文によると、どうもこの都市伝説はウソらしい。

「フレンチパラドックス」が生んだワインの都市伝説

 フランス人が肉や乳製品を中心とした高脂肪な食生活を送っているにもかかわらず、心疾患などの生活習慣病に罹患する率が低いという「フレンチパラドックス」を説明する理由として、フランス人はよくワインを飲むからだといわれた時期が1990年代にあった。恐らくこのころから、健康に良いというワインの都市伝説が生まれたのだろうが、すでに「フレンチパラドックス」自体が否定されている(「Archives of Internal Medicine」2009; 169: 659-69)現在でも、ワインに特別な効能を期待する向きは多い。

 Holahan氏らは、55~65歳の男女802人を、飲酒習慣によって3つのグループに分けた。内訳は、全く飲酒をしないグループ(345人)、ワインを主に(飲酒量の3分の2以上)適度に(1日1~2杯程度)飲酒するグループ(176人)、ワインはほとんど飲まない(飲酒量の3分の1以下)が他のアルコールは適度に飲むグループ(281人)の3群。その後の寿命を、20年にわたり追跡調査した。

ワイン好きが長生きなのはワインのせいではない

 その結果、飲酒群は非飲酒群より有意に長生きしたが、主にワインを飲む群とワインはあまり飲まない群では、寿命に有意な差が見出せなかった。

 主にワインを飲むか飲まないかだけで単純に両者を比較した場合、後者は前者より死亡率が1.85倍も高かったという。しかし、ワインをあまり飲まない群は、より高齢で、男性の比率、健康に問題を抱える人の割合、喫煙率がすべて高く、社会経済的な地位も低い上、積極的な運動もしないという傾向が認められたため、それらの要因を差し引いたところ、両者の間の差がなくなってしまった。つまり、主にワインを飲む人がワインをあまり飲まない人より長生きしたのは、ワイン自体のせいではなかったというわけだ。

 ワイン信奉者には少し気の毒な研究結果ではあるが、アルコールを適度にたしなむ人は、全く飲まない人より長生きできることは実証されたようなので、それでよいのではないだろうか。

(サイエンスライター・神無 久)

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