「孤独感」持つ60歳以上で死亡リスク1.5倍

　孤独と感じている60歳以上の人では身体機能の低下、または死亡のリスクが増加する可能性を、6月18日付の米医学誌「Archives of Internal Medicine」（電子版）に報告したのは米カリフォルニア大学のCarla M. Perissinotto氏ら。同氏らは、全米の高齢者人口を代表する60歳以上（年齢中央値71歳、女性59％、白人81％）の1,604人を対象とした研究を行った。

　研究開始時に行われたアンケート調査の結果、全体の43％が孤独を感じていた。孤独と答えたグループ（693人）は、孤独でないグループ（911人）に比べ、その後6年の追跡期間に日常生活動作の低下を感じる割合が1.59倍、手先を使った作業に困難を感じる割合が1.28倍、階段や坂を上ることに困難を感じる割合が1.31倍と増加していた。さらに、孤独群では死亡リスクが1.45倍に上昇していたという。

　Perissinotto氏らは今回の検討から、60歳以上の孤独感は機能低下や死亡の予測因子となる可能性を指摘している。

心臓病リスクある45～80歳の独居者で死亡リスク上昇

　米国の成人の7人に1人が独居状態にあるほか、社会からの孤立が神経ホルモンの異常などを介してストレス増加に関連するというエビデンス（科学的根拠となる研究結果）が報告されている―と指摘するのは、同日付の同誌（電子版）に報告を行った米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJacob A. Udell氏ら。

　同氏らは、動脈硬化患者を対象とした国際共同研究の参加者のうち、心臓や血管の病気（心血管疾患）のリスクが高い人など4万4,573人のうち、一人暮らしの8,594人（19％）における死亡リスクを検討した。

　一人暮らしでないグループに比べ、一人暮らしのグループ（独居群）では4年後の全死亡ならびに心血管疾患によって死亡する割合が上昇していた。年齢別の検討では、45～65歳と66～80歳の独居群で、全死亡（全ての理由による死亡）のリスクがそれぞれ1.24倍、1.12倍に上昇していることが分かった。ただし、80歳を超えるとリスクの上昇は見られなくなったという。これは、心血管疾患による死亡でも同様の結果だった。

　Udell氏らは、45歳以上で心血管疾患のリスクを持つ人では、一人暮らしが全死亡と心血管疾患による死亡の独立したリスクとなる可能性があるとしている。

働き盛りの独居者で抗うつ薬使用率1.8倍

　一人暮らしと熱中症での死亡リスクのほか、精神的な問題や自殺といったリスク増加の関連も指摘されている。米国や英国では3人に1人が独居状態にあるとの報告もあり、今後、独居率は史上類を見ないほど上昇すると予測―少し怖くなるような研究背景を披露しているのは、フィンランド産業衛生研究所のLaura Pulkki-Råback氏ら。

　同氏らは、一人暮らしと精神的問題の関連に着目し、同国内の働き盛り年齢の男女3,471人（年齢中央値44.6歳）を対象に行った研究の結果を、5月23日付の英医学誌「BMC Public Health」（電子版）に報告。検討の結果、一人暮らしのグループ（独居群、504人）は一人暮らしでないグループ（2,967人）に比べ、抗うつ薬の使用率が1.81倍だった。独居群ではまた、プライベートでの社会的サポートの不足や社会に対する敵意を感じる人の割合が高かったほか、部屋が荒れている人の割合も多かったことなども示されている。

　一方、独居群の抗うつ薬使用のリスクは、教育レベルや雇用状況といった社会人口学的因子を加味すると1.64倍に下がり、心理社会的因子や喫煙・飲酒など健康に関連する生活習慣因子を考慮しても、それぞれ1.71倍、1.74倍に低下した。

　Pulkki-Råback氏らは「今回の結果から、一人暮らしと精神的問題のリスク上昇の関連が示された」と結論。精神的問題の背景には物理的、心理社会的要因が存在することも示唆されたと述べている。

（編集部）