子宮筋腫と子宮腺筋症について
2012年06月30日 12:34
子宮に関係する不妊の原因としては、主に子宮筋腫や子宮腺筋症などがあります。東邦大学医療センター大森病院(東京都)リプロダクションセンター・婦人科の片桐由起子准教授は「これらの病気にかかっても妊娠は可能ですし、実際に筋腫があっても順調に出産する人も少なくありません。それぞれの症状の程度や、(子宮筋腫の場合は)腫瘍がある場所が大きく影響してきます」と説明。妊娠の前段階で、子宮筋腫や子宮腺筋症が影響を及ぼすケースや治療法などを聞きました。
「子宮筋腫」内腔に影響がある場合は治療
子宮筋腫と子宮腺筋症のどちらも、発生する原因は分かっていません。子宮筋腫は、子宮の筋層に良性の腫瘍(筋腫)が形成される状態をいいます。症状としては、月経時の経血量が増える過多月経や、月経痛がひどくなる月経困難症などがあります。
子宮の内腔に影響を及ぼすような筋腫の場合は、筋腫核出術(筋腫のみ摘出する手術)を行う必要がありますが、「筋腫と正常な子宮の筋肉との境界がはっきりしているので手術が行いやすい」(片桐准教授)そうです。また、子宮の筋層にできる筋層内筋腫や、子宮の外側を覆う漿膜(しょうまく)下にできる漿膜下筋腫など、子宮内腔に直接影響しなくても、大きく成長して血流を阻害し内腔を変形させるといった妊娠経過に影響を及ぼす可能性が高い場合は、事前に治療した方がよいようです。
ただし、子宮筋腫は手術で摘出しても再び発生する可能性があります。手術を行った場合は、再発が起こらないうちに妊娠を計画することが望ましいですが、手術の直後は子宮破裂の恐れがあるため、術後数カ月は避妊する期間を設けることが必要となります。
「子宮腺筋症」薬物療法で改善
子宮腺筋症は子宮内膜症と似た病気(類縁疾患)で、子宮内膜が子宮の筋層の中で生じます。そのため、正常な個所と異常な個所の境界が不明瞭で、子宮の筋肉全体が分厚くなって子宮のサイズも大きくなります。
子宮腺筋症の主な治療法は薬物療法ですが、治療に用いられる薬は排卵を停止させるため、治療期間中は妊娠できません。低用量ピルの服用や「GnRHアゴニスト」という薬を使ったホルモン治療法などを薬の種類に応じて一定期間続け、子宮を含むお腹の環境が改善したところで妊娠の準備を整えていきます。GnRHアゴニストの場合は、治療可能な期間が最長で6カ月間。治療後は妊娠のチャンスができますが、根治的な治療ではないため妊娠を望む人にとっては再発が問題となります。
根治的な治療法は子宮を取り除く全摘術のため、妊娠を希望する人には適用されません。病症部分を削り取る方法はあるものの、手術的な治療方法が行われる機会は筋腫に比べると少ないようです。
最近は自覚症状があっても、「忙しくて受診できなかった」という人が増えているといいます。片桐准教授は「放置していると、筋腫が大きくなったり内膜症が悪化したりと、病症の程度が強くなる可能性があります。異常に気が付いたら早めに受診してください。また、特に自覚症状がなくても、年に1度は定期検診を受けることを勧めます」と助言しています。