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渡辺徹さんインタビュー(心臓病・糖尿病との闘い)(4)

 2012年11月05日 10:04

――もうすぐ手術から半年ですが、先生からはどのようなことを?

 心臓の方はあと1回、6カ月の検診でカテーテル検査をして、異常がなければ終わりです。ただ、糖尿病は持病ですから、これは一生ちゃんとやって行かないと...。先生には「今回は処置がうまく行っただけで完治ではありません。どうしてなったか原因はご存じですね?」と言われました。「生活習慣が原因なんで、それを取り除いたわけではありません。手術前と同じ生活をしたら、また同じ状態になるということですよ」とくぎを刺されたんです。

 先生の言葉って大事ですね。入院中も「われわれは仲間ですから、同志として一緒に頑張りましょう、チームですから」っていう言葉が印象に残っています。一緒に病気と戦いましょう、何でも相談してからやりましょうって、これはうれしい言葉でした。それから、「"美食家"になってくださいね」って言われたのは驚きました。

――"美食家"ですか?

 食べることが大好きなのに、食べることに興味を持っちゃダメだとずうっと思っていたんです。糖尿病だから。それなのに、もっと興味を持てと言われたんですよね。

 先生が言うには、あなたは今までただお腹を満たしていただけだと。味とか食材とかもっと興味を持って食べると、少しずつゆっくりかんで食べられると言われたんですよ。マヨネーズを吸っていたくらいだったので、たしかに"美食家"ではなかったなと(笑)。言われた通りに実践してみると、我慢するじゃなくて、食事を楽しめばいいんだと理解しました。そこから血糖値も良くなってきましたね。"美食家"になるっていうのは、健康になるということなんですね。

――今、振り返って入院はいかがでしたか?

 ありがたい入院でしたね。仕事もこんなに休んだことなかったんで、総合病院ですし、この際だから今までできなかった検査も、目、鼻、喉、内臓、皮膚、歯と全部してもらいました。これだけの検査をこなしたので、入院中は仕事する以上に忙しくしていたかもしれません(笑)。おかげさまで、心臓以外は大丈夫でした。

 でもね、入院中はいろいろと考えましたよ。心配してくれて、久々に田舎の同級生からも連絡が来たんです。すると、「俺は去年、動脈瘤になって...」とか「高血圧でちょっと寝込んじゃって...」とか、この年齢になるとみんな何かしら病気を持っているんですよ。そうすると、人間って何なんだろうって考えちゃって...。みんないずれ死ぬわけですよ。そのゴールは見えている。ゴールに向かって人間は必ず疲弊していく。全身が健康なまま最期を迎えるのは難しいらしい。そうしたら、人間は何が問われるのかと。

 自分の調子悪いこと、体調の不具合とどう付き合っていくかが問われるんだな、後半の人生はって気付きました。起きてしまったことを悲観するのではなく、その起きてしまったこととどううまく付き合うかが、人間力を問われることなのかなと。病気になるとだいたい「なんで自分だけが」と考えがちですが、そうじゃなくて「よし! これを抱えて楽しく生きるぞ」と考えることが必要なんじゃないかなと思いました。妻にもさんざん言われました。病気とどうやってうまく付き合って豊かな人生にしていくのかが、あなたの魅力になっていくんじゃないかって。

 それと、入院して何が良かったかって、妻とたくさん話せたことです。こんなに話すことは最近なかったな、というくらい、病室で話すことができました。

――支えてくれたご家族に伝えたいことは?

 心から言いたいのは...家族に恩返ししたいということ。恩返しって何だろうっていうと、自分が健康でいることなんだろうと思います。自分が不安だからとかつらいからとかじゃなくて、家族のために健康でいたいと、今回の入院を経てものすごく思うようになりました。それが家族に対する愛情だってことを、もう一度かみしめなきゃいけない。

 これは、うわべではずいぶん前から言っていたんですが・・・(笑)。でも、真剣に思ったのは今回が初めて。そして、今回は敢えて言っていません。言葉にせずに実践して見せるしかないなと。

――同じような境遇、同世代の方への一言伝えるとすれば?

 同年代の同性なら通じると思うんですが、もっと甘えた方がいい。自分の体に、そして家族に甘えるべきです。

 弱みは見せられないとか、心配をかけられないとか、そういう勝手な思いは結局、何も生み出しません。もっとさらけ出しちゃった方が、体にも家族にも良いんだと。むしろそれをやってみたら、そっちの方が幸せというか、かっこいいというか、ものすごく家族との距離、妻との距離が縮まりました。とても心地のよいことですから、勇気を持って甘えましょう!

(取材:さえき文香/撮影:さとうわたる)

渡辺徹(わたなべとおる)

 1961年に栃木県で生まれ、茨城県で育つ。高校卒業後の80年に文学座附属演劇研究所に入所し、翌年、テレビドラマ「太陽にほえろ!」(日本テレビ系)のラガー刑事役でデビュー。85年に文学座座員となる。俳優としてゴールデン・アロー賞放送新人賞、エランドール新人賞、第26回菊田一夫演劇賞などを受賞したほか、歌手、司会、ナレーターとしても活躍。87年には、テレビドラマで共演した女優の榊原郁恵さんと結婚する。現在、「すイエんサー」(NHK Eテレ、毎週火曜午後7時25分から)、「地球ドラマチック」ナレーション(NHK Eテレ、毎週土曜午後7時から)などに出演中。

舞台「ハーベスト」
(2012年12月11日~24日、世田谷パブリックシアター)

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 養豚業に生涯を捧げた男性の、激動の人生を描いた作品。手掛けたのは、英国で今最も注目されている劇作家リチャード・ビーン。ビーン作品としては日本初上陸で、渡辺さんにとって舞台復帰作となります。入院・手術を経て「生きる意味を、今までとは違った意味で捉えられる」と語る渡辺さん、主人公の19歳から110歳までという幅広い年齢をどう演じるのか、注目です。

問い合わせ:
世田谷パブリックシアター 03-5432-1515
http://setagaya-pt.jp

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