打撲による慢性硬膜下血腫、認知症に似た症状も
2012年11月21日 11:47
何カ月か前に頭を打ったことが原因で起こる頭痛がある。加えて失禁や麻痺(まひ)が起きたり、時間・場所の認識があやふやになったりしたら慢性硬膜下血腫かもしれない。国立国際医療研究センター病院(東京都)脳神経外科の原徹男科長は「認知症と間違わないように」と警告している。
血の塊が脳を圧迫
脳は外側から順に硬膜、くも膜、軟膜という3つの膜に覆われ、保護されている。慢性硬膜下血腫は、脳の表面にある静脈が切れ、血液が硬膜とくも膜との間に少しずつ漏れ出してたまってくる病気だ。血液は血腫(血の塊)となり、徐々に大きくなって脳を圧迫し、さまざまな症状を引き起こす。
出血の原因の多くは、1~3カ月前に起きた頭の打撲。タクシーに乗り込むとき頭をぶつけた、家で鴨居(かもい)に頭をぶつけたといった、日常ありふれたことでも起こるので、本人が覚えていない場合も少なくない。
加齢に伴って脳が萎縮すると、脳の表面の静脈は常に引っ張られた状態になる。そのため、ちょっとした衝撃でも静脈が切れることがある。このため、慢性硬膜下血腫は60歳以上に多く、外出の機会に差があるためか、女性よりも男性で多く発症する。
手術で大抵は回復
症状は「穿(せん)頭血腫洗浄ドレナージ法」という手術によって多くの場合回復する。局所麻酔をして頭に50円玉大ぐらいの穴を開け、生理食塩水で血腫を洗い流した後、1~2日チューブを入れたままにして残りの血液を排出する。約1週間で退院できるという。
この病気は、頭痛や頭が何となくすっきりしないといった症状以外に、失禁や麻痺、時間や場所などの認識があやふやになる見当識障害が現れることがある。そのため、認知症と間違われたり、加齢のためとして放置されるケースもある。
原科長は「早期に治療すれば、多くの人が元気を取り戻すことができるので、思い当たる症状があれば、すぐにでも神経内科や脳神経外科などの専門医を受診するとよいでしょう」とアドバイスしている。
(編集部)
2010年5月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)