がん患者はアルツハイマー病にかからない? 米研究
2013年07月22日 10:30
高齢化によって増えている病気の代表として、がんとアルツハイマー病が挙げられる。生涯にかかる割合は、がんで2人に1人、アルツハイマー病で10人に1人~5人に1人といわれているが、がんにかかっているとアルツハイマー病にかかりにくいとする米国での研究結果が、7月13~18日に米ボストンで開催された国際アルツハイマー協会会議(AAIC)で発表された。同会議では、糖尿病治療薬「メトホルミン」がアルツハイマー病を予防するとの研究結果も発表されている。
肝臓がんで51%のリスク減少
がんとアルツハイマー病の関係を発表したのは、米ボストン退役軍人医療システムのLaura Frain医師ら。認知症患者にはがんが少なく、がん患者には認知症が少ないというのは以前から指摘されており、昨年3月にはがん患者ではアルツハイマー病になるリスクが33%減少し、アルツハイマー病患者ががんになるリスクは61%減ったとする研究結果が発表されている(関連記事)。
Frain氏らは今回、1996~2011年に65歳以上で認知症になっていない米国の退役軍人349万9,378人を6年程度追跡し、19種類のがんとアルツハイマー病の関係を検討した。
その結果、がん全体では関係が認められなかったが、がんの種類別ではがんにかかったことがない人に比べてアルツハイマー病リスクが低下。肝臓がん患者では51%も減少した。一方、前立腺がんとメラノーマ(悪性黒色腫=皮膚がんの一種)ではアルツハイマーリスクが12~14%増加した。
また、がんの種類にかかわらず、抗がん薬などの化学療法を受けていた人では、受けていない人に比べてアルツハイマー病リスクが17~23%低下していたことも分かった。
メトホルミンでも20%のリスク減
一方、糖尿病(2型)は認知症になるリスクを倍増させると指摘されているが、米カイザー・パーマネンテ研究部門のRachel Whitmer氏らは、糖尿病治療薬のメトホルミン(商品名メトグルコ、グリコランなど)を使っている患者では、ほかの糖尿病治療薬を使っている患者に比べてアルツハイマー病になりにくいと発表した。
Whitmer氏らは、1999年10月~2001年11月に薬による糖尿病治療(メトホルミン、スルホニル尿素薬、チアゾリジン薬、インスリン製剤のいずれか1剤のみ)を始めた55歳以上の1万4,891人を対象に、薬とアルツハイマー病リスクとの関連を検討。その結果、メトホルミン以外の薬を使っていた患者に比べて、メトホルミン使っていた患者ではアルツハイマー病リスクが減少、スルホニル尿素薬と比べたリスクは20%減だった。
このほか、フランスからは42万9,000人を対象とした研究で、退職年齢が高くなるほど認知症になるリスクが減ることなども発表された。
(編集部)