もともと便秘がちなんですが、近頃はトイレに行ってもスッキリしません。ちまたでいわれている「宿便」というのは本当にあるのでしょうか。あるとしたら、どうしたらなくなるのでしょうか。
恭子(女性50代)
schedule 2013年10月22日 公開
もともと便秘がちなんですが、近頃はトイレに行ってもスッキリしません。ちまたでいわれている「宿便」というのは本当にあるのでしょうか。あるとしたら、どうしたらなくなるのでしょうか。
恭子(女性50代)
「宿便」は辞書(大辞林)で「排出されないで大腸や直腸内に長い間たまっている大便」と定義されていますが、医学用語ではありません。
広告などでは「宿便を出して健康になろう」「宿便を出したら、痩せられた!」「宿便を取ればきれいになれる!」と、「宿便」が健康被害の悪の根源であるかのように記載されています。
腸の壁がひだのようになっているため、その谷間部分に便が入り込んでたまってしまい、「腸にヘドロのようにこびりついた便」が「宿便」であるという考えのようです。納得してしまいそうな内容ですが、これは嘘です。
消化管は、口側から肛門側へ向かって食べた物を移動させるため、蠕動(ぜんどう)運動をしています。常に動いているので、同じところがずっと谷ということはなく、谷にもなれば山にもなります。また、腸の壁は数日で新しい細胞に置き替わり、新陳代謝をしているので、ヘドロのように便がこびり付いてしまうことはあり得ないのです。
ただ、「便秘で腸にたまっている便」という意味では「宿便」はあります。便秘がちで、お手洗いに行ってもスッキリ感がないとのこと。便秘は安易に便秘薬を使わず、生活習慣などを見直すことから始めてみましょう。便秘の改善については、厚生労働省の情報サイト「e-ヘルスネット」などをご参照ください。
症状が気になったり、改善しなかったりしたら、消化器専門医を受診なさってくださいね。
1990年、東京女子医科大学卒業後、慶應義塾大学医学部内科学教室に入局。都立広尾病院、国立病院機構栃木病院などを経て、2007年から三菱UFJニコス株式会社診療所勤務。同社において初代統括産業医として、社員の健康管理を行っている。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント。
医学新聞『Medical Tribune』を1968年に創刊して以来、メディアカンパニーとして半世紀以上にわたり、国内外の最新医学・医療情報を提供し続けています。メディカルトリビューンでは、その蓄積されたノウハウを利用し、正確な情報の提供がより一層重要と考え、「必要とされる」情報を「正確に」提供し続けていきます。