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よくかんで食べるとリラックスするって本当?

 2014年04月17日 06:00

<専門家へきいてみよう 「質問する」より> 

〔症例〕 60代 女性
〔症状〕 よくかんで食事をすると、体にリラックス効果が起こると聞きました。本当でしょうか。

本当です。 

 食べ物には、味、香り、色、温度などいろいろな情報があります。口の中に食べ物を運んで小さくなるまで歯でかんでいる感覚は、歯の根を包む神経の膜、歯根膜から三叉神経を通じて、脳の中の記憶をつかさどる「海馬」や思考をつかさどる「前頭前野」などへ情報が伝達されます(関連記事)。それとともに、味覚、嗅覚、言語、感覚、自律神経などをつかさどる下記の部位にも情報が伝えられます。 

・言語、感覚、情動などの神経中枢がある「大脳皮質」
・嗅覚、味覚に関わる「島皮質」
・情動の表出、意欲、記憶、自律神経活動に関わる複数の構造物の総称「大脳辺縁系」
・新陳代謝、体温調節、水分調節、消化、吸収など自律神経の最高中枢「視床下部」
 

全身へのリラックス効果 

 おいしいものを食べたときに幸福感を抱く方は多いと思います。人間の感情としての喜びとは別に、脳には食欲や睡眠欲など本能的な欲求が満たされることへの喜び「情動(快情動)」があります。よくかんで食べることの素晴らしさは、脳が本能的な欲求が満たされたことへの報酬として「安心感」「満足感」「全身へリラックス効果」が与えられることにあります。 

 一般医療機関や精神科などで処方されるうつ病や統合失調症の薬は、病状や進行を抑えることはできますが、このような安心感、満足感、全身へのリラックス効果は得られません。これは、現在の薬にはできない、かんで食べることの素晴らしい効果なのです。   

よくかむと脳の血流量も増える 

 私たちの脳は、心臓と同じように常に血液循環を必要としています。それは、血液脳関門と呼ばれる関門を通った血液だけが、脳のエネルギー源である「糖質(ブトウ糖)」を運搬できるからです。脳の中の血液循環を良くするには脳の血流量を増やす必要がありますが、それができる行動の一つが「硬い物をよくかむ」ことなのです。 

 軟らかいケーキ、軟らかいご飯、硬めのご飯、イカの刺身、それぞれの硬さのグミをかんだときの血流量を比べた研究では、軟らかい物より硬い物の方が、脳の血流量が1.5倍以上も増加することが分かりました。また、グラグラしてうまくかめない歯に歯周治療をしたり、失った歯にインプラントや入れ歯を入れてよくかめるようにしたりすることで、脳の血流量が増えることも報告されています。 

 昔から硬い物をかむと頭に良いとされてきましたが、本当だったのです。

指導・監修

上濱 正(うえはま ただし)

上濱 正(うえはま ただし)
ウエハマ歯科医院 院長
明海大学歯学部臨床 教授

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