トイレやエレベーターでも! 血糖値下げる楽々エクササイズ
2014年05月08日 10:30
分かっていてもできないもの、それが生活習慣病予防のための運動だ。しかし「できない理由」を挙げている間にできてしまう運動もある。4月30日に東京都内で開かれた一般社団法人「食・楽・健康協会」(代表理事=山田悟・北里研究所病院糖尿病センター長)主催のセミナーでは、隙間の時間にできる血糖値改善のための運動が紹介された。オフィスでもエレベーターでもトイレでもできて、「回数は数えなくてよい」という楽々エクササイズとは―?
「腹式呼吸とおなかの引き締め」が基本
講師を務めたのは、北里研究所病院(東京都)診療技術部メディカルトレーナー科の渡辺雄一科長補佐と加藤明子主任。ともに健康運動指導士であり、病気や障害を抱える患者から五輪出場を目指す選手まで、さまざまな目的に応じた運動プログラムを指導している。
この日のセミナーでは、特に糖尿病患者に勧められる血糖値の改善に効果的なエクササイズが6種類紹介された。エクササイズといっても時間・場所を選ばず、1~2分程度でできる簡単な動きで、肩凝りや腰痛の改善にもオススメの運動だ。
準備運動ができるようなら、両腕を頭上に挙げて軽く伸ばし、そのまま左右にゆっくり倒してストレッチしておきたいが、無理ならそのままエクササイズを開始してよい。
「ゆっくりとおなかまで息を吸って吐きます。おなかはデップリと出すのではなく引き締めることを心がけて」と渡辺氏。どの動きも回数を数える必要はない。「数えると面倒になってきますから」というのがその理由だ。
頭は仕事や家事など別のところに使いながら、エクササイズを開始する。まずは椅子に座ってできる運動。紹介する4種類の運動に順番はなく、気が向いたものを気持ち良い分だけ行う。
①座面の前3分の1ほどに浅めに腰掛ける。一方の脚をもう一方の脚の膝に四の字になるように組み、息を大きく吸って吐きながらできる角度まで前屈する。このとき背中が丸くならないよう、背筋と骨盤を意識する。もう一方の脚も同様に行う。
②背筋を伸ばしておなかに両手を当てる。鼻から息を吸っておなかを膨らませ、息を吐きながらおなかを「くしゃっ」とつぶすように平らにする。ベルトからおなかが離れていくイメージを描くとよい。「デスクに肘を突きがちだったり、背中が丸くなったりしているのは体幹が弱っている証拠。この運動で改善できます」と加藤さん。
③さらに腹式呼吸を使いながら、両肩に手を当てて肘を前から後ろへ回し、肩甲骨を動かす。回す際は、鼻の前で両肘がぶつかるようにし、肘を目いっぱい上げ、後ろでも肘が突くように意識する。肩の血流が良くなるため肩凝り改善にも効果的だ。
④おなかを引き締めたまま、椅子に浅く腰掛け、そのまま一方の脚を膝からゆっくり上げて、ゆっくり下げる。上げる高さは何センチでも構わないし、腕の位置もどこでもよい。パソコンを使いながらでもできる運動だ。
体幹部が熱くなってくる
続いて、電車内やエレベーター待ちなどで立っている隙間時間を利用したエクササイズ。
⑤両脚を肩幅に開き、親指でつま先立ちをして、かかとをゆっくり上げ下げする。両手を後ろに回すと胸が開き、おなかを平たくへこませやすい。
⑥椅子の背を持ち、両脚を開いて、ゆっくりと四股を踏むように膝の曲げ伸ばしをする。爪先と膝の方向をそろえるのがポイントだ。背筋、おなか、骨盤を意識して行う。人前で両脚を開きにくい場合は、椅子の座面3分の1ほどに腰掛け、足と膝を軽く開いた状態でゆっくりとお尻から座り、ゆっくりと立ち上がる。「トイレでもできる運動です」と渡辺氏。
加藤氏は「いずれも1~2分でできる運動ですが、これだけでも体幹部がかなり熱くなってくるのが感じられると思います。足腰に不安のある人でも問題なく筋肉が鍛えられ、血糖値の改善という目的には理にかなった運動です。肩甲骨付近の運動は、野球のイチロー選手やゴルフの石川遼選手ら多くのスポーツ選手も行っているもので、体の故障を防ぎ、柔軟性を保つのに非常に有効です」と説明する。
万歩計を持つだけで1日2,500歩増える
どれほど簡単かつ有効と言われても、やる気になれない、そもそも運動は楽しくないし嫌い、という人もいるだろう。
そういう場合は、「楽しくなくても続けたくなる」ツールの導入がモチベーション向上に効果的だ。糖尿病専門医である山田代表理事は、ただ万歩計を身に付けるようになるだけで、1日の歩数が2,500歩近く増えるという研究結果を紹介(「JAMA」 2007; 298: 2296-2304)。
さらに、血糖値が高く、かつ心筋梗塞などの心血管病になる危険性の高い人では、1日の歩数が2,000歩増えると心血管病になる危険性が8%減るとの研究結果(「Lancet」 2014; 383: 1059-1066)を挙げ、「家族や同僚とその日の歩数を話題にするなどしてやる気を引き出して」と述べた。
(軸丸 靖子)