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ビールや育毛剤が男性不妊の原因に!? 精子弱める5つの習慣

 2016年01月14日 06:00

 不妊は女性だけでなく、男性側の原因で起こる可能性があることがクローズアップされてきた。とはいえ、「俺は大丈夫」と考えている男性がほとんどだろう。しかし、日常の意外なところに、男性不妊に陥ってしまう落とし穴は存在している。ビールの飲み過ぎから育毛剤まで、男性機能を脅かすとされる5つの意外なファクターを、医学論文から検証してみた。

男性機能を脅かす意外なNG習慣

 ひと昔前まで、不妊といえば女性の問題だと捉えられるのが一般的だったが、近年は男性原因の不妊というのも数多くあるということが広く知られるようになった。結婚前に、カップル両方の深刻な病気や性感染症、さらに生殖機能の異常などがあるかないかを調べる「ブライダルチェック」が新しい常識になりつつあるとも報道されている。

 男性不妊は先天的なものや、ケガなどが原因の場合も少なくないが、意外なことに、日常生活の中でも知らないうちに男性機能にダメージを与えるさまざまな悪習慣があるという。今回は、そんな男性機能に悪いとされている行為を5つほど紹介したいと思う。

1.酒の飲み過ぎ

 南デンマーク大学環境医学部のティナ・ヤンセン教授らが、2014年に英医学誌「BMJ Open」(2014; 4: e005462)で発表した調査結果によると、18~28歳の健康な男性1,221人の血液と精子を分析したところ、アルコールをビール換算で毎日約240ミリリットルもしくは1週間に約1.9リットル以上飲んでいる男性は、精子の数や運動率、奇形率に影響があることが分かったという。

 また、ビール換算で「週に1~5杯」を飲んでいた男性に比べ、「週に40杯以上」を飲んでいた男性では、精子の濃度が33%低下していたことも判明。調査では、週に350ミリリットルのビールを5杯以上飲むと精子の質は低下し始めるともあり、大酒飲みだけでなく、たしなむ程度でも影響があるようだ。これまでも飲酒は喫煙と並んで男性機能に悪影響をもたらすというイメージはあったものの、想像以上に男性機能にダメージを与えやすいのかもしれない。なお、この研究の被験者に最も好まれていた酒は、ビールだったという。

2.自転車

 健康のためにサイクリングを楽しむという人も多いが、こちらもやり過ぎは男性機能にダメージを与えることが叫ばれている。スペイン・コルドバ大学医学大学院のディアナ・ファーモンデ教授らが2009年に「欧州ヒト生殖・発生学会(ESHRE)」の会合で発表した調査結果によると、日常的に長距離のサイクリングをしている男性は不妊リスクが高くなるという。

 この研究では、国際的に活躍するトライアスロン選手15人を対象とし、各選手のトレーニング方法を把握し、彼らの精子を採取して分析したところ、自転車に乗っている時間が長い選手ほど精子に異常が見られる割合が高いという結果が判明。中でも、週185マイル(約298キロ)、1日に約25マイル(約40キロ)以上の自転車トレーニングを行っている選手では、正常な精子の割合が4%以下だった。

 この原因は、サドルによる圧迫や摩擦などとされており、ほかにも同様の研究結果を発表している論文もあることから、その信頼性は高いものと考えられる。

 もちろん、健康のためにサイクリングをしている人で、1日40キロも自転車で走行する人はそう多くないとは思うが、何事もやり過ぎないことが肝心だろう。

3.肥満

 万病のもとといわれている肥満も、やはり男性機能にダメージを与えることが発覚している。欧州ヒト生殖・発生学会(ESHRE)の専門誌「Human Reproduction」(2015; 30: 1006-1013)によると、イタリア・パドバ大学の研究チームは、肥満の男性20人と健康な男性20人の陰嚢(いんのう)に小型体温計を装着して温度の推移を分析したところ、それぞれの1日の平均体温は肥満男性で35.38度、健康な男性で34.73度と差が見られたという。

 また健康な男性は、陰嚢の温度が睡眠中や運転、仕事などで長時間座っている時に上昇し、歩いている時には下がるなどの変動が見られたが、肥満男性はその変動が少なく、陰嚢が高い温度に保たれることから、男性機能を低下させ、精子の染色体異常などを招いている可能性があるとしている。

 肥満男性は高脂血症などを原因として、勃起力に問題を抱えるケースが多いとされていたが、精子を生産する能力にも問題を抱えてしまう可能性が高いようだ。

4.タイトな下着、衣類の着用

 こちらはちまたでもささやかれている話だが、精巣を体に密着させるような下着、あるいは衣服を着用すると、男性機能に障害が起こりやすくなるようだ。

 英マンチェスター大学人口保健研究所のアンドリュー・ポベイ氏らが、2012年に「Human Reproduction」(2012; 27: 2799-2806)に発表した調査結果によると、精子の数の少ない男性939人と多い男性1,310人を調べたところ、精子に悪いといわれている麻薬、たばこ、飲酒、肥満などよりも、タイトな下着や衣類の着用が、精子の数に大きな影響を与えることが分かったという。

 精巣を温めることで男性機能が落ちるというのは以前から知られているが、男性機能に悪いとされているいくつかの要因よりも、強烈な負の効果があるというのは驚きだ。

5.育毛剤の使用

 生殖機能と並ぶ男性特有の悩み、毛髪の問題に対処するべく開発された育毛剤。それが何と、男性不妊を引き起こす恐れがあるという。

 米生殖医学会誌「Fertility and Aterility」(2013; 100: 1542-1546)に掲載されたカナダ・マウントサイナイ・トロント病院のメアリー・サンプラスキー助教らの論文によると、日本では「プロペシア」に含まれている成分「フィナステリド」を常用していた27人の男性を対象に、フィナステリドの服用を中止する前とした後で精子の数を比べた結果、中止後に平均で11.6倍に増えたという。

 この論文では、「低用量でもフィナステリドが精子数の減少の原因になるため、不妊治療をしている男性は使用を中止すべき」と結論している。髪の悩みか男性機能か...ある意味で究極の二択を迫る問題だろう。

 以上、男性不妊となり得る5つの原因を紹介した。もちろん、これらに当てはまれば即不妊になるというものではない。とはいえ、男として健康的な生活を送る上で役立つと言えそうだ。

(阿左美賢治)

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