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薬に頼らずうつ病治療、東京・御茶ノ水にTMS専門医院

 2016年05月20日 06:00

 日本人の5%以上がかかっているといわれるうつ病。その治療法に、薬以外のものがあるのをご存じだろうか。その一つが、脳に磁気を介して電流を流す「TMS(経頭蓋=ずがい=磁気刺激)」だ。そのTMS療法を専門に行う施設「お茶の水うつ病クリニック」が5月10日、東京・御茶ノ水に開院した。TMS療法の専門家が治療を行うので、安心して治療を受けられるのが特色だ。石井久史院長に案内してもらった。

米国では2008年に承認

 うつ病の治療でまず思い浮かべるのが薬。しかし、副作用が心配な上に、薬であまり効果が得られない患者もいる。そこで、薬を使わない治療法をうまく活用することが重要となる。

 その代表格の一つが、「認知行動療法」をはじめとする精神療法。副作用なしに薬と同等の効果が得られるといわれているが、一方で(1)すぐに効果が現れず治療に時間がかかる、(2)努力が必要で精神状態が悪い患者には向いていない―などの難点がある。そこで脚光を浴びつつあるのが、もう一つの非薬物治療のTMS療法だ。

 TMS療法は、うつ病で血流が悪くなっている脳の前頭葉という部分に磁気を介して電気刺激を与え、脳機能のバランスを整える治療法。従来の電気痙攣(けいれん)療法に比べ、副作用が少なく安全性が高いといわれている。日本ではまだ国の認可を受けておらず健康保険が使えないものの、その効果は数々の研究で証明されており、米国では2008年に承認されている。

TMS研究の第一人者が治療

 お茶の水うつ病クリニックでは、初診は問診、脳波、光トポグラフィー、心理測定などの検査を行い、磁気刺激の強度や当てる位置を決定して終了。2回目から実際にコイルを当てて治療を行っていく。1クールの治療が終了すると再度検査を行い、どの程度改善したかが評価される。

 患者によって1クールの治療回数は15~40回と異なり、治療間隔は週3~5回。初診は2時間弱かかるものの、その後の治療時間は1回40分ほどとなっている。

 診療費用は初診時3万5,000円、治療1回2万円。健康保険が適用されないため、治療費は全額自己負担となる。ただし、TMS療法の相場が約100万円とされる中、31万5,000円(15回)~81万5,000円(40回)はかなりの低価格と言えるだろう。さらに、TMS研究の第一人者である杏林大学名誉教授の古賀良彦氏らが顧問、TMS療法の専門家である石井久史氏が院長を務めるという安心感も同院の魅力だ。

 なお、副作用として、電気刺激を与えている部分の痛みや不快感、頭痛のほか、てんかん発作を引き起こす場合があるが、てんかん患者でない限り発生率は非常に低いとされている(0.003%)。そのてんかん患者のほか、頭に手術するほどのケガを負ったことがある人、心臓ペースメーカーや人工内耳など金属を体に埋め込んでいる人らは治療を受けることができない。

「薬で救いきれなかった患者を助けたい」

 石井院長らは、薬によるうつ病治療を否定しているわけではない。ただ、薬の副作用が心配な人や薬物治療で効果が得られない人がいるのも事実だ。石井院長は「薬で救いきれなかった患者を助けたい」と訴える。

 また、TMSはうつ病だけでなく、不眠、頭痛や耳鳴り、パーキンソン病、ジストニアなどにも効果があると報告されているが、同クリニックでは治療対象をうつ病と不眠に限っている。その理由として、石井院長は「多くの実績が得られているうつ病の治療や不眠の改善ならば、安心して治療を提供できるから」と説明。今後、知見がさらに集まれば、他の精神障害にも治療の対象を広げていきたいとしている。

(小島領平)

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