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乳幼児の入院原因トップ、RSウイルス感染症

 2016年09月01日 06:00

 RSウイルスをご存じだろうか。風邪の原因として一般的なウイルスの一つだが、特に乳幼児が感染しやすく、重症化すると入院が必要になる場合もある。実際、RSウイルス感染症は先進国では乳幼児が入院する原因の第1位。しかし、インフルエンザや水ぼうそうといった感染症と比べるとRSウイルス感染症がどんな病気かについてはあまり知られていない。8月25日に東京都で開かれたプレスセミナー(主催:アッヴィ合同会社)では、同感染症の流行シーズンを前に、東京都立小児総合医療センター感染症科医長の堀越裕歩氏が、同感染症による乳幼児の入院の実態をさまざまなデータを交えて紹介。また実際に昨年の冬、生後9カ月の時にRSウイルス感染症で入院した女の子の母親が経験談を披露し、「最初は風邪かと思っていたのにどんどんひどくなって、死んでしまうのではないかと不安になった」と当時の動揺や不安について振り返った。

発症から3日で重症化、1週間前後の入院が必要に

 RSウイルスは風邪の原因となるウイルスの一つで、感染者の咳やくしゃみで飛び散る鼻汁や痰に含まれるRSウイルスを吸い込んだり、ウイルスが付いている手指やドアノブや手すり、おもちゃなどに触ったりなめたりすることで感染する。例年、9月頃から徐々に感染者が増え、12月前後に流行のピークを迎える。1歳の誕生日までに70%が、2歳までには100%が感染するといわれているが、感染しても多くの場合、軽い鼻風邪程度の症状だけで治る。

 しかし、特に注意が必要なのは重症化しやすい赤ちゃんや低年齢児、もともと心臓や呼吸器、腎臓などに病気がある子供や大人だ。重症化すると肺炎や細気管支炎などの呼吸器感染症をひき起こし、呼吸数が増えたり呼吸がゼイゼイするなど、うまく呼吸ができなくなる。現時点では有効な治療薬がないため、呼吸を助ける治療(酸素投与や人工呼吸器など)で自然回復を待つしかなく、入院が必要になることがある。堀越氏によると、特に低年齢児ではRSウイルス感染症は入院の主な原因となっていて、国内での入院患者は年間2~3万人に上ると推定されているという。

 赤ちゃんや低年齢児は、普段元気でもRSウイルスに感染すると急速に症状が悪化することが少なくない。今年(2016年)7月、同氏が監修者として協力し、RSウイルス感染症で入院したことのある子供の親103人を対象にアッヴィ合同会社が実施した調査では、3歳未満で入院した子供の6割以上を持病のない健康な子供が占めていたという。同調査からはRSウイルス感染症の症状が最初に出てから入院までの期間は平均2.9日で、入院期間は同6.7日、退院してから症状がなくなるまでの期間は同9.9日であることが分かり、発症してから急速に重症化して約1週間の入院となり、退院後も回復まで約10日間が必要な実態が明らかになった。

9割以上の親が「こんなに怖いと思わなかった」

 また、入院した子供の親に入院時の気持ちを聞いたところ、9割以上の親が「入院するとは思わなかった」「RSウイルス感染症がこんなに怖いと思わなかった」「健康な子供でも油断できないと思った」と回答。さらに、重い症状に苦しむ子供だけでなく、親自身も十分食事や睡眠がとれなくなったり、食事の支度や洗濯など家事ができなくなるなど毎日の生活でも大きな負担が強いられることが分かった。

 さらに、「入院前に知っておきたかったこと」について聞いたところ、約半数の親が「重症化すると脳死や死に至る可能性もあること」「RSウイルス感染症には効果的な治療法がないこと」「風邪のような症状が出ること」などを挙げていた。

 この他、共働き家庭では、子供の入院中だけでなく入院後もしばらくは保育園に預けることができないため、長期にわたって仕事を休む必要がある。しかし、子供の病気が理由で休むことについて、職場での理解がなかなか得られないことも、親の負担をより重くしているのではないかと堀越氏は指摘した。

重症化リスク高い赤ちゃんいる家庭は特に注意を

 実際、昨年の冬に当時9カ月の長女がRSウイルス感染症で8日間入院したという埼玉県在住の青木さんは、「最初は軽い咳と鼻水が続いていたが、急に高熱が出て嘔吐もするようになり、発熱から3日後にRSウイルス感染症と診断された。症状がどんどんひどくなり、呼吸も苦しそうで、死んでしまうのではないかと心配になった」と振り返り、「RSウイルス感染症の名前は知っていたが、想像以上に重症化することが分かった」と話した。

 また、長女の他に幼稚園に通う2人の男の子がいる青木さんは、家族内感染を防ぐために長男を親類に預けたが、「長女の入院中は家族がバラバラになり、子供たちの精神面への影響も心配だった」と打ち明けた。

 青木さんの経験談や子供が入院したことのある親へのアンケートからは、それまで健康なわが子が軽い風邪の症状から数日で重症化し、1週間前後の入院となってしまい、精神的にも家庭生活の面でも大きな負担を強いられている親が多いことが分かる。インフルエンザには予防のためのワクチンや治療薬があるが、現時点でRSウイルス感染症に対する効果的な治療薬や予防のためのワクチンもない親にできるのは予防対策だけだ。堀越氏は「特に重症化するリスクが高い赤ちゃんがいる家庭では、日常的に手洗いを心がけ、咳が出るときにはマスクをするなど、適切な対策を講じてほしい」と呼びかけた。

(あなたの健康百科編集部)

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