子どものうつ病―薬物による治療に限界
2016年09月26日 06:00
子どものうつ病と一言にいっても、児童期のうつ病は大人のようにうつ病らしい症状があまり出ないのが特徴で、「不眠などの睡眠異常」「食欲の低下」「体重が増えず、むしろ痩せる」などといった身体症状に出たり、症状をよく表現できず「腹痛」「頭痛」などを訴えることも。さらに、小学校の高学年から中学生の思春期になると、それまでの児童期までとは少し違う症状が見られ、元気がない、疲れやすい、集中力がなくなるといった症状が多く、動くのが億劫になって引きこもりのような状態になることもある。こうした児童、思春期のうつ病に薬物療法の効果がほとんどないことを英国オックスフォード大学の国際研究グループが医学誌「Lancet」(2016;388:881-890)に発表した。
薬物治療をするとしたら...fluoxetineが最善
児童と思春期のうつ病に薬物治療を行うべきかどうか、抗うつ薬を投与する場合にどの薬剤を優先すべきかについては議論がある。児童・思春期のうつ病に関しては、診断が困難、かつ安易な抗うつ薬治療がかえって自殺リスクを高めるなどの問題点が指摘され議論が多い。日本のガイドライン(2016年版)では、成育歴を含めた患者背景と病気の総合的な理解、心理カウンセリングや疾患教育、生活環境などの調整、家族への支援といった病気への理解やケアが強調されている。
同研究グループは、児童および思春期のうつ病の急性期治療における抗うつ薬の有効性と安全性を解析した。5,260人の患者について、14種類の抗うつ薬について検討が行われた。
14種類の抗うつ薬
・アミトリプチリン ・citalopram ・クロミプラミン ・デュロキセチン
・desipramine ・エスシタロプラム ・イミプラミン ・fluoxetine ・ミルタザピン ・nefazodone ・ノルトリプチリン ・パロキセチン ・セルトラリン ・ベンラファキシン
(英表記は日本未承認)
結果、明らかな症状改善が認められたのはfluoxetineのみだった。薬よって生じる副作用が耐えられるかどうかを示す忍容性に関してもfluoxetineがデュロキセチンやイミプラミンより優れていた。デュロキセチン、イミプラミン、ベンラファキシンは薬物との因果関係ははっきりとしないが、好ましくない症状や病気による理由での中止率が高かった。
この結果について、同グループは「児童・思春期のうつ病治療に抗うつ薬が明らかな利益があるとはいえないが、薬物療法を考慮するとしたらfluoxetineが最善の選択肢となるだろうと」としている。
(あなたの健康百科編集部)