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ケトン食で高齢者の認知機能が向上

 2016年10月03日 06:00

 脳は通常、糖をエネルギーとするが、加齢の影響や機能不全に陥った脳は糖を利用する機能が低下する。脳はエネルギー源である糖を利用できなくなると機能低下などを起こすが、中鎖脂肪酸から作られるケトン体を利用できるため、認知機能低下の予防に中鎖脂肪酸が有効だと考えられている。国立精神・神経医療研究センター神経研究所の研究グループが、中鎖脂肪酸油(MCT)を含むケトン食の摂取により、認知症でない高齢者の認知機能が向上することを科学誌「Psychopharmacology」(オンライン版)に発表した。

体内でケトン体となる中鎖脂肪酸油で脳力UP

 同研究グループは、19人(女性13人、男性6人)の認知症でない60歳以上の高齢者にケトン体の生成が高まるように中鎖脂肪酸油を配合した特別な粉ミルク(ケトン食)を摂取することで高齢者の認知機能を高められるかを検討した。中鎖脂肪酸油は母乳や牛乳、チーズなどの乳製品に含まれているほか、ヤシ科の植物に多く含まれる天然成分で、代表的なものとしてはココナツオイル(約60%が中鎖脂肪酸)やパームオイルがある。

 それぞれの被験者にケトン食とケトン食にふくまれるMCTを同カロリーの長鎖脂肪酸油に置き換えたものを別々の日に摂取してもらい、血中のケトン体濃度の変化と複数の認知機能テストの成績を比較した。

 ケトン食を摂取した時には血中ケトン体濃度が高く推移し、さらに作業記憶や遂行機能に関する成績や一連の認知機能テストの総合成績が高いという結果が得られた。

 また、ケトン食ではないものを摂取した時の認知機能テストの総合成績が低かったグループと高かったグループに分けたところ、成績の低かったグループでケトン食による総合成績の向上がより顕著にみられたという。

 なお今回の研究においてケトン食として使用されたのは、中鎖脂肪酸油を配合した特別な粉ミルク(明治ケトンフォーミュラ)。生まれつき糖質をエネルギーとして利用できない先天代謝異常や、薬で治療が困難な難治性てんかんなど、子どものケトン食療法のために使用される粉ミルクで、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会先天性代謝異常症治療用ミルク 関係事業(特殊ミルク事務局)を通じて医療機関に提供されている。投薬で発作が抑えられない「難治性てんかん」の患者に対するケトン食療法はこれまで病院負担で行われてきたが、2016年4月から保険適用になっている。

 安全性が不明な物質と違い、中鎖脂肪酸を含む食品、例えば牛乳や乳製品などを積極的に食生活に取り入れ、脳のエネルギー不足を補うことで機能を向上させる効果があれば、こんなに良いことはないだろう。

(あなたの健康百科編集部)

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