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コレステロール値の異常、遺伝性の病気かも

 2016年10月04日 06:00

 コレステロールの数値が子どもの頃から高かった、油っぽいものを控えて薬を飲んでいるのに、なかなか下がらない。そんな人は、家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia、以下FH)という病気かもしれない。世界FHデーの9月24日、FH患者同士の交流や治療に関する情報提供を目的とした「高コレステロール血症患者のつどい」が、国立循環器病研究センター研究所(大阪府)で開催された。同研究所病態代謝部の斯波真理子(しば・まりこ)部長は、「FH患者さんは動脈硬化が進みやすいため、適切な治療を続けることが大切です」と強調した。

若いうちに動脈硬化になりやすい 

 「高コレステロール血症患者のつどい(以下、患者のつどい)」は、国立循環器病研究センターが支援しているFH患者会の設立10周年記念イベントとして開催された。

 FHは、「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールの数値が生まれつき高い、遺伝性の病気。変異した遺伝子を片方の親から受け継いでいる場合を「ヘテロ接合体」、両方の親から受け継いでいる場合を「ホモ接合体」と呼ぶ。ホモ接合体はヘテロ接合体に比べて重症化しやすい。治療をしていない状態でのLDLコレステロール値は、ヘテロ接合体で150〜420mg/dL、ホモ接合体では500〜900mg/dLに達する。

 ①高LDLコレステロール血症(未治療時のLDLコレステロール180mg/dL以上)②アキレス腱の腫れや、皮膚(手の甲、ひざ、ひじなど)にコレステロールのかたまりがある③血のつながった家族にFHや心臓病の人がいる−といった特徴があれば、FHの可能性がある。日本には25万〜64万人のFH患者がいると推定されているが、認知度が低いため、本人が気付いていないケースも多いと考えられている。

 通常、血液中のLDLコレステロールは、肝臓表面にあるLDL受容体という物質によって細胞内に取り込まれ処理される。しかしFH患者ではLDL受容体、あるいはLDL受容体を働かせる遺伝子に異常があるため、LDLコレステロールが細胞に取り込まれず、血液中に溜まってしまう。LDLコレステロールが溜まると動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの血管が詰まる病気にかかる危険が高まる。

 このため、LDLコレステロール値を下げる治療が必要であり、スタチンやエゼチミブ、プロブコールなどの薬が使われる。最近では、PCSK9阻害薬という新しい薬も登場した。

 なお、ホモ接合体に対する有効な治療法として、血液中のLDLコレステロールを取り除くアフェレシス治療(血液浄化療法)がある。ただし、数日経つとLDLコレステロール値は再び上昇するため、2週間または1週間に1回行う必要がある。

新薬の登場でコントロール可能な時代に 

 「患者のつどい」では、小学校入学前にFHと診断され、アフェレシス治療を30年以上受けている患者が、自身の体験を語った。アフェレシス治療をしなければ10代で心筋梗塞になると言われ、2週間に1度、家族に付き添われ、遠方の病院に足を運んだ。就学以降は通学しながらの治療に苦労したが、今は子宝にも恵まれ、幸せに暮らしているという。アフェレシス治療は高額だが、2009年、FHホモ接合体が特定疾患治療研究事業の対象に認定され、医療費助成が行われるようになり、負担が軽減したそうだ。

 一方、PCSK9阻害薬の治験(厚生労働省に新薬の承認を得るために行われる試験)に参加したという患者は、同薬によりLDLコレステロール値が大幅に低下し、アフェレシス治療から離脱できた自身の経験を紹介。この薬は注射剤だが、「ペン型タイプで、痛みはほとんど感じなかった」と語った。LDLコレステロールは、無治療のときは400mg/dLを超えていたが、PCSK9阻害薬の治療を始めてからは、50〜90mg/dLで安定しているという。「人によっては必ずしも効果が出るとは限らないようだが、今後多くの患者さんにとって新しい選択肢になると思う」と期待を示した。

 FHの治療と研究に長年携わってきた斯波部長は、PCSK9阻害薬について説明。現在、レパーサ、プラルエントという2剤があり、スタチンで十分な効果が得られない高コレステロール血症が適応である。FHヘテロ接合体患者に対しては、原則として2週間に1回、皮下注射する。ホモ接合体患者では、効かない人もいるという。

 斯波部長は、ホモ接合体患者に対する新しい薬として、MTP阻害薬という薬剤が間もなく使えるようになることも明かした。肝臓からのLDLコレステロールの合成を抑える作用があり、ホモ接合体患者を対象とした治験で、LDLコレステロールを40%程度低下させたという。「MTP阻害薬が使えるようになれば、アフェレシス治療の頻度を減らせる人も出てくるかもしれません」と期待を述べる。

 最後に斯波部長は、「FH患者さんは食事療法だけではLDLコレステロールが下がりにくい」としながらも、「それでも食事療法は大事です。野菜を十分にとり、動物性脂肪を控えるなど、適切な食生活を心掛けて下さい。禁煙や、肥満の改善も忘れないで下さい」と呼び掛けた。

(あなたの健康百科編集部)

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