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胃から巨大な毛髪の塊―ラプンツェル症候群

 2016年11月01日 06:00

 塔の上に閉じ込められた、長く美しい黄金の髪を持つ少女ラプンツェルのストーリーは、今も世界中の子供たちに読み継がれているグリム童話の一つ。その少女の名前が付けられた病気「ラプンツェル症候群」をご存じだろうか。自分の髪を抜かずにはいられない「抜毛症」と、抜いた毛を食べ続けてしまう「食毛症」が関連する、とてもまれな病状で、食べた髪の毛が塊となって胃や腸に残ってしまい、命に関わることもある恐ろしい病気だ。米アリゾナ大学の研究グループは今回、そんなラプンツェル症候群の女性について、9月26日発行の英医学誌「BMJ Case Reports」(電子版)に報告した。研究グループが開腹術を行ったところ、胃の中から15×10cm大の毛髪の塊が見つかったという。

食毛症の約3分の1に合併

 自分の毛髪を抜かないと落ち着かず、抜くことで安心するという症状は、皮膚炎や統合失調症などが原因でない場合、抜毛症と診断される。研究グループによると、米国では抜毛症の人の割合は1~4%で、このうち5~20%は抜いた毛を食べずにはいられない食毛症や、食べた毛が胃の中で結石化する毛髪胃石を合併しているという。

 さらに、食毛症の人の約3分の1に見られるのがラプンツェル症候群だ。この病気は、食べた毛髪がボール状の塊となって胃に留まり、さらに塊から尻尾のように毛髪の束が十二指腸や回腸、さらには結腸にまで広がった状態のことを指す。代表的な症状は吐き気や嘔吐(おうと)、膨満感、排便習慣の変化、吐血、体重減少など。通常、こうした症状に加え、血液などの臨床検査、レントゲンやCTスキャンなどによる画像から診断されるという。

 これまでに報告されているラプンツェル症候群の約8割は、女児や10歳代の若い女性だが、今回報告されたのは38歳の女性。吐き気と嘔吐、便秘、腹部膨満感を訴えて受診した。発熱や腹痛、下血、吐血はなかったが、ダイエットをしているわけでもないのに、8カ月間で体重が6.8キロも減り(初診時の肥満指数=BMI=は22)、この1年間、食欲もなくなっていたという。精神疾患の病歴や入院歴はなかった。

15×10センチ大の毛の塊

 初診時に、女性の心拍数や血圧値は正常だったが、腹部が膨張。脚にむくみがあったが、目の周りにはなく、神経の病気や、心臓や血管などの病気を調べる検査で異常はなかったという。ただ、検査の結果、血液1デシリットル中の総タンパク質が6グラム、アルブミンが2.5グラムと低く、肝機能の低下がうかがえた。

 女性の状態が急速に悪化し、追加の検査ができない中、研究グループが手術を行ったところ、胃の内部に15×10センチ大の、ボール状の毛髪の塊が見つかった。この塊には尻尾のように髪の毛の束がつながっており、その束は十二指腸にまで達していた。また、回腸末端にも4×3センチ大の毛の塊ができていたという。

 手術で毛髪の塊を全て摘出し、6日後に退院、栄養管理とともに精神科での治療が開始された。食事に関しては、卵や鶏の胸肉などの高タンパク質の食事を取るよう指導された。なお、研究グループの調べによると、ラプンツェル症候群はこれまで、今回の女性を含めて88人が報告されているという。

(あなたの健康百科編集部)

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