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高齢者の術後の意識障害「せん妄」に鎮静薬

 2016年11月21日 06:00

 入院中、夜中に大声をあげて暴れる、術後に大事な管を勝手に引き抜いてしまい、看護師さんに迷惑をかけてしまう―といった困った状況が、手術後の高齢者に起きることがある。このような場合、「せん妄」という意識障害が起こっているかもしれない。この度、高齢者の「せん妄」に対して、鎮静薬の一つである「デクスメデトミジン」の低用量投与が有効だとする研究結果が、中国・北京大学第一医院の研究グループから発表された。研究の詳細は、10月15日発行の英医学誌「Lancet」(2016; 388: 1893-1902)に掲載されている。

術後のせん妄は偽薬群で23%、デクスメデトミジン群で9%

 せん妄は、急激に認知機能が低下したり、幻覚や妄想などの精神症状が出現したりする意識障害だ。手術がきっかけとなって現れる術後の合併症として、高齢者ではよく見られる。手術によるストレスのほか、手術中に使用される麻酔薬などが原因となることもある。

 対処法としては、せん妄の原因をすみやかに取り除くこと。できるだけ落ち着ける環境を整え、家族や病院のスタッフが話しかけ患者を安心させるようにする。場合によっては、興奮を抑える薬を使うこともある。

 今回、研究グループは、鎮静薬の1つであるデクスメデトミジンを用いた研究を実施。心臓以外の手術を受けた65歳以上の患者700人を対象に、デクスメデトミジンを予防的に低用量投与し、術後に起こるせん妄を抑制できるかどうかを検討した。

 対象患者を、デクスメデトミジン投与群(0.1μg/kg/日)350人と、偽薬群(生理食塩水)350人の2グループに分け、手術当日の集中治療室への入室時から翌朝8時まで静脈内に投与した。せん妄の発症を、術後7日間にわたり、1日2回ずつ評価した。

 その結果、術後のせん妄の発症は、偽薬群350人中79人(23%)に対して、デクスメデトミジン群は350人中32人(9%)と、デクスメデトミジン群で明らかに少なかった。

 安全性に関して解析したところ、デクスメデトミジン群は偽薬群に比べて、高血圧の発生率が0.5倍と明らかに低かった。また、同様の比較で、頻脈の発生率も0.44倍と低かった。低血圧症と徐脈の発生率は、両群で差はなかったという。

 研究グループは「心臓以外の手術を受けた高齢者へのデクスメデトミジンの投与は、術後7日間のせん妄の抑制に有効だった。そして、この療法が安全であることも示された」とコメントしている。

(あなたの健康百科編集部)

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