HIVワクチン、長期の効果はいかに?
2016年12月09日 06:00
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)撲滅の切り札として期待されているHIVワクチンの開発が、着実に進んでいる。米国立衛生研究所(NIH)は11月28日、HIVワクチンに対する感染の予防効果を調べることを目的に、人を対象にした臨床試験「HIV Vaccine Trials Network(HVTN)702」が南アフリカで開始されたと発表した。試験では、候補となる2つのワクチンを組み合わせた治療計画が立てられ、実際にワクチンを接種して、その効果と安全性を確認する。現在、各国で複数のHIVワクチンの開発が進んでいるが、効果を評価するための臨床試験が行われるのは7年ぶりとなる。
わずかな予防効果でも経済的負担の軽減に
この試験はNIH傘下の米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)による助成を受け実施される。南アフリカのHIVに感染していない18~35歳の性的活動が活発な男女5,400人を対象に、候補となる2つのワクチンを組み合わせた治療計画により、HIV感染の予防効果が調査される。
今回の治療計画は、2009年にタイで実施された試験に基づいて立てられた。タイの試験では、これら2つの候補となるワクチンを接種することで、平均3.5年の追跡期間中に、HIVの感染頻度が偽薬に比べて31.2%低下したと報告されている。
今回は、タイで行われた手順を、南アフリカで流行しているHIVのタイプに合わせ微調整した。また、ワクチンの効果を高めるため、1年後に追加で接種するよう接種スケジュールを修正するとともに、特定の免疫補助剤を使用することで、さらに長期の予防効果を得られるかどうかが検討される。
南アフリカでは毎日約1,000人もの人が、新たにHIVに感染しているという。NIAIDのAnthony S. Fauci長官は「たとえワクチンによる予防効果がわずかであっても,南アフリカなどのHIV感染者が多い国々では、感染による経済的コストの大幅な軽減につながるのではないか」と期待を寄せている。
なお、HVTN702試験の結果は、2020年までに得られる見通しだという。
(あなたの健康百科編集部)