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覚醒剤の恐怖、使用で心血管が老化

 2017年03月29日 06:00

 加齢に伴い、体にはさまざまな変化が起こる。白髪やしわといった目に見える変化はもちろん、外からは見えないところにも変化は生じる。血管もその1つ。このほど、オーストラリア・西オーストラリア大学の研究グループにより、覚醒剤アンフェタミンをみだりに使用すると、心血管の老化が加速する可能性が示された。研究の詳細は、1月10日発行の医学誌「Heart Asia」(2017; 9: 30-38)に掲載されている。

慢性的な加齢変化の末に心血管イベント発生も

 アンフェタミンは、米国などでは注意欠如・多動性障害の治療に使われているが、日本では覚醒剤取締法で規制されている。交感神経に働きかけアドレナリンという闘争系のホルモンを過剰に産生させ、心拍数や血圧を上げたり、脳卒中や心臓発作、動脈瘤の破裂といったリスクを上昇させたりする。また、乱用すると、見た目が急速に老けていくことが知られている。

 さらに、アンフェタミンは心筋梗塞などの急性心血管イベントを引き起こすと言われている。研究グループは、それについて、アンフェタミンにより交感神経の作用が過剰になり、アドレナリンが過剰に産生されることで、心血管にストレスがかかり、皮膚と同様に心血管の老化が進み、重篤なイベントが発生するのではないかと考えた。

 そして、上腕と手首の動脈で血流の状態を測定し、それを元に血管年齢を算出。アンフェタミンの使用が、皮膚と同様に心血管の老化を促進するかについて検討した。

 対象は、2006~11年に物質の乱用でクリニックを受診した患者713人。薬物使用に関する問診の結果から、非喫煙群483人(平均30.03歳)、喫煙群107人(平均30.76歳)、アンフェタミン使用群55人(平均34.44歳)、強力な鎮痛薬メサドン使用群68人(平均40.45歳)の4群に分類した。

 アンフェタミン使用のタイミングは、大部分(94%)が直近1週間以内で、約半数(47%)が前日であった。

 さまざまな解析の結果、アンフェタミン使用群の心血管は、喫煙群およびメサドン使用群に比べ、生物学的年齢において急速に老化が進んでいることが示された。体重やコレステロール値、炎症反応を示すC反応性蛋白(CRP)など心血管に影響を与えるとされる危険因子を調整しても、結果に変わりはなかったという。

 研究グループは、今回の結果を踏まえ、「アンフェタミンのような精神刺激薬を乱用すると、生理学的に正常な経年変化のプロセスを加速させてしまう可能性がある」と結論付けた。

 また、研究グループは、「アンフェタミンは、長期にわたり繰り返し使用されるケースが多く、心血管の年齢に関しては急性の影響だけでなく慢性的な影響も受けるだろう」とし、「心臓自体が予想より急速に老化していく可能性もある」と述べている。

 今回の結果を受けて、研究グループは「精神刺激薬の世界的な蔓延への対策が急がれる」と今後の課題を示している。

(あなたの健康百科編集部)

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