あの薬が影響? 知らぬ間に陥る鉄不足
2017年04月12日 06:00
体に必要な鉄分が不足した状態が続くと、疲れやすくなる、風邪を引きやすくなるなどさまざまな不調が起こる。女性は月経や出産などで鉄分を失う機会が多く、気付かぬうちに鉄不足に陥っているケースも多いようだ。このほど、米国のカイザー・パーマネンテ研究所のグループが行った鉄欠乏症に関連する研究の結果が報告された。胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの治療薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)やヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)を2年以上使用していると、鉄欠乏症になるリスクが高まるのだという。研究の詳細は、3月発行の医学誌「Gastroenterology」(2017;152:821-829)に掲載されている。
2年以上のPPI継続で、鉄欠乏症リスクが2.49倍に
研究グループは、1999~2013年に新たに鉄欠乏症と診断された患者7万7,046人と、その患者と条件がマッチした鉄欠乏症と診断されていない対照者38万9,314人を比較する研究を実施。PPIとH2ブロッカーという2つの潰瘍治療薬の使用と、その後の鉄欠乏症リスクとの関係について調査した。
患者集団のうちPPIを2年以上使っていたのは2,343人、H2ブロッカーを2年以上使っていたのは1,063人だった。一方、対照集団では、PPI 使用が3,354人、H2ブロッカー使用が2,247人だった。
解析の結果、PPIを2年以上使用すると、しない場合に比べて、その後に鉄欠乏症を発症するリスクが2.49倍上昇した。H2ブロッカーを2年以上使用した場合も同様に、鉄欠乏症のリスクが1.58倍高くなった。
PPIを使用している集団では、1日に使う薬の量が増えると鉄欠乏症の発症リスクが上昇し、使用を中止するとそのリスクは低下したという。
(あなたの健康百科編集部)