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子ども時代の不幸な経験が人生を左右?

 2017年05月29日 06:00

 子ども時代の不幸な出来事はどの程度その人の人生を左右するのだろうか。このたび、スウェーデンの研究グループが、子ども時代の家族の死、虐待、別居、住居の不安定さといった経験とその後の自殺との関連を検討したところ、こうした"困窮"に遭遇した人は自殺リスクが増加し、さらにその経験数が多いほど自殺のリスクも増加すると報告した。詳細は、医学誌「BMJ」(2017;357:j1334)に掲載されている。

全体の42%が何らかの不幸な出来事を経験

 研究グループは、スウェーデンの出生届と人口登録簿を元にして、1987~91年に生まれた54万8,721人を対象として、0~14歳の間に経験した"困窮"と15~24歳での自殺との関係を検討した。

 「親や兄弟の死」「家族内の自殺」「親の重度な薬物乱用」「親の精神障害」「親の犯罪(実刑、執行猶予、精神疾患のため医療刑務所)」「親との離別/一人親世帯」「住居の不安定さ(2回以上の転居)」「生活保護」などを"困窮"、不幸な経験とした。

 解析の結果、42%が少なくとも1つの不幸な出来事を経験していた。最も多い出来事は、「親との離別/一人親世帯」(29%)、「生活保護」(20%)だった。不幸な出来事を1つも経験していない子どもに比べて、1つでも経験している子どもは、学校での行いが悪かったり、小児精神病を経験したり、両親の学歴や所得が低かったり、両親がスウェーデン国外生まれである傾向があった。

"困窮"経験で自殺リスクが約2倍に

 追跡期間中、431人が自殺で死亡し、自殺率は10.6(10万人/年)となった。不幸な経験の中で最も高い自殺率(10万人/年)を示したは、「家族内の自殺」で34.9、「親の精神障害」で27.8、「親の犯罪」で26.6であった。子ども時代に不幸な経験がない者と比較した自殺リスクは、「家族内の自殺」2.9倍、「親の犯罪」2.3倍、「親の精神障害」2.0倍、「家族内の死亡」1.9倍、「親の薬物乱用」1.9倍、「住居の不安定性」1.6倍、「生活保護」1.6倍、「親との離別/一人親世帯」1.4倍と自殺リスクは「親との離別/一人親世帯」の経験を除いて、どれも約2倍となっていた。

 不幸な出来事の経験数と自殺のリスクの間には相関関係があり、不幸な経験が1つの場合1.1倍、2つの場合では1.9倍、3つ以上の場合は2.6倍になるといった関係があった。

学校の成績も自殺リスクと関係、小児期の精神疾患の経験は無関係

 小児期の精神疾患の経験は、そのような経験がない者と比較して自殺リスクを高めることはなかった。これに対して、学校での成績は自殺のリスクと関連していた。 学校の成績が最も高いグループと比較して、成績の低いグループは自殺のリスクが2倍、留年はリスクが3倍以上、退学などの場合はリスクが4倍となった。

 なお、「親の精神障害」は本人の精神障害等に密接に関わるため、その影響を排除して分析したが、自殺との関連は有意なままであった。

 結論として、この研究は、子ども時代の不幸な出来事の経験が、青少年や若年成人時のの自殺のリスク増加と関連しているという明確な証拠となった。また、"困窮"経験の積み重ねは自殺のリスクを強めていた。

 こうした結果は、自殺の社会的メカニズムを理解し、恵まれない子どもの自殺リスクを軽減する効果的な介入の必要を訴えていると、研究グループは強調している。

   (あなたの健康百科編集部)

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