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オピオイド系鎮痛薬の乱用、米で依然問題に

 2017年06月12日 06:00

 米国では、慢性の痛みの治療に使われるオピオイド系と呼ばれる鎮痛薬が多用され、依存症が社会問題になっている。日本ではあまりなじみがないが、2016年に亡くなった人気歌手のプリンスさんの死因がオピオイド系鎮痛薬の過剰摂取であったというニュースを見聞きした人もいるだろう。このほど、米国の医療政策に関する調査などを行うカイザー家族基金が、2015年の「薬物使用と健康に関する全米調査」を分析し、その内容を報告した。

オピオイド依存症で非高齢の保険未加入者に6つの特徴

 オピオイド鎮痛薬は、手術中や術後の痛み、けがによる痛み、がんによる痛み、神経損傷による慢性の痛みなどに対する痛み止めとして用いられる。日本での使用頻度は米国ほど高くなく、使用できる薬の種類にも違いがある。

 カイザー家族基金によると、米国のオピオイドの乱用は激化しており、処方されたオピオイド系鎮痛薬でオピオイド依存症になった患者が、2015年には200万人を超えたという。また、オピオイドの乱用による死者は、2015年に3万3,000人を上回り、2002年の3倍に迫る勢いだ。

 オピオイドの使用による医療保険サービスの利用者も激増。2000年から2014年の間に、オピオイド関連で入院した人は64%増加し、オピオイド関連による救急外来の受診者は99%増加した。

 「メディケイド」は、米国の低所得者に対する公的医療保険制度であり、65万人を超える非高齢のオピオイド依存症患者に対して治療サービスを提供するなど、オピオイドのまん延対策に重要な役割を果たしている。2017年5月の時点で、連邦政府の資金援助により、32の州でメディケイドの対象範囲が拡大された。それにより、これまでメディケイドの対象外だった人にも、オピオイド依存症を治療するチャンスが広がった。

 しかし、メディケイドの対象が拡大されなかった州では、オピオイド依存症患者の多くが保険に加入しないままだ。2017年5月時点で、オピオイドの乱用による死亡率が平均を上回る26の州のうち、8つの州でメディケイドの対象者が拡大されていない。

 オピオイド依存症の非高齢者のうち保険に入っていなかったのは、2015年時点で44万1,000人近くに上る。メディケイド・プログラムの見直しといった米国内の事情により、メディケイド非加入のオピオイド依存症患者は、実際のところもっと増加するかもしれないという。

 以下は、オピオイド依存症の非高齢者のうち保険未加入者に関する分析データだ。

●5人に1人は保険未加入
●白人、男性、年齢18~34歳が多い
●10人中6人は働いているが、58%が低所得で、そのうち37%は貧困層
●5人中4人は扶養している子どもがいない
●半数以上が過去1年間に精神障害にかかっている。そして、5人に1人がうつ病、双極性障害、統合失調症といった深刻な精神疾患を患っている
●メディケイド対象者に比べて、過去1年間に入院治療、外来治療とも受けている人が少ない
(カイザー家族基金が実施した2015年「薬物使用と健康に関する全米調査」(NSDUH)の分析より)

 日本と米国では薬の処方事情が違うとはいえ、オピオイド系鎮痛薬は常習性があることを医療者はもちろん、患者であるわれわれも留意しておく必要はあるかもしれない。

(あなたの健康百科編集部)

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