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たばこは「すわん」!屋内完全禁煙の実施を

 2017年09月19日 06:00

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、医療関係者を中心に、禁煙と受動喫煙防止を国や自治体レベルで定めるよう求める声が強まっている。しかし、6月18日に閉会した先の通常国会では、厚生労働省から提出された受動喫煙防止法案が自民党内の反対によって先送りされるなど、国の対応は依然として進んでいない。そのような中で、禁煙推進委員会の設置や啓発キャラクター「すわん君」の活用など、従来から禁煙化の取り組みを積極的に展開しているのが日本循環器学会だ。8月31日、同学会が「ストップCVD(心血管疾患)」をテーマにプレスセミナーを開催。大阪大学大学院循環器内科学教授の瀧原圭子氏と、岐阜県総合医療センター循環器内科主任医長の飯田真美氏が講演した。

喫煙が「代謝」と「炎症」の2方面から老化を促進

 肺がんを筆頭に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患、さらには糖尿病や脂質異常症など、喫煙が危険因子となって生じる疾患は非常に幅広いことが知られている。瀧原氏は特に「老化」に焦点を当て、喫煙が「Klotho(クロトー)」と呼ばれる老化遺伝子に与える影響について解説した。

 老化遺伝子Klothoには、脂肪肝や脂質異常症などに関与する「FGF21」と、抗炎症作用を持つ「α-Klotho」という2つの関連分子が存在する。瀧原氏らの研究チームがこのFGF21とα-Klothoについて、喫煙者における血中濃度を非喫煙者と比較したところ、いずれも喫煙者で高い値になっており、喫煙者では代謝異常が進み、炎症を生じさせやすくなっていることがうかがわれた(Sci Rep 2015; 5)。

 こうした研究結果を受け、同氏は「喫煙は炎症と代謝に影響を与え、老化促進に関わっている可能性がある」と指摘。「喫煙は老化を進める環境因子の1つだと考えられる」と結論付けた。

講演した飯田真美氏(左)と瀧原圭子氏(右)

 瀧原氏に続いて登壇した飯田氏は、喫煙が循環器に及ぼすリスクを踏まえ、法規制によって受動喫煙対策を定めた国内外の事例を紹介した。2002年6月〜12月の約半年間にわたり公共の場と職場での禁煙が条例で定められた米モンタナ州ヘレナでは、急性心筋梗塞の割合が4割も減少。日本では、2013年4月に受動喫煙防止条例が施行された神戸市で、急性心筋梗塞の発症数はその前後で895人から792人に減少したという。

 さらに同氏は、アテネやトリノ、北京や昨年のリオデジャネイロまで、過去のオリンピック・パラリンピック開催都市ではいずれも全面禁煙を定めた罰則付きの法規制が行われたが、東京では飲食店などを含めた全面禁煙化が決められていない現状を紹介()。「東京オリンピック・パラリンピック2020に向けて、国際基準にのっとった屋内完全禁煙を整えることが、国際的に求められている」「東京だけができないとなると、国際的に恥ずかしい」と禁煙化の推進を訴え、講演を締めくくった。

表.オリンピック開催都市における罰則付き禁煙条例の施行状況

(あなたの健康百科編集部)

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