米国でフェンタニル過剰摂取による死亡が急増
2017年11月10日 06:00
米国では、がんなどの痛みを取るために使われるオピオイド鎮痛薬の過剰摂取による死亡の急増が、大きな問題となっている。米疾病対策センター(CDC)のJulie K. O'Donnell氏らは、米国におけるオピオイド過剰摂取による死亡者の半数以上で、フェンタニル(モルヒネの50〜100倍の強力な合成オピオイド)の陽性反応が示されたとMorb Mortal Wkly Rep(2017; 66: 1197-1202)に発表した。
2016年の薬物過剰摂取死は6万人超
米国における、2016年の薬物過剰摂取による全死亡者は、6万人を超えると見積もられている。中でも合成オピオイドの過剰摂取による死亡は、2013年の約3,000人から2016年には約2万人と大幅に増加している。この急速な増加には、不法に製造されたフェンタニルの影響が大きいという。フェンタニルは、昨年(2016年)急死した米国の人気歌手プリンスさんの死因として報道されたことが記憶に新しい。
O'Donnell氏らによると、昨年下半期に米国の10州(オクラホマ、ニューメキシコ、ウィスコンシン、ウェストバージニア、オハイオ、メーン、ミズーリ、ロードアイランド、マサチューセッツ、ニューハンプシャー)で、5,152人がオピオイドの過剰摂取により死亡した。そのうちの2,903人(56.3%)でフェンタニルの陽性反応が示されたという。
また、720人(14.0%)は大型動物の鎮静などに使われる強力な合成オピオイド、カルフェンタニルを含むフェンタニル類似物質に陽性反応を示した。フェンタニル類似物質が薬物過剰摂取死や不法なオピオイド提供などに関連するケースが増えてきている。
コカインやヘロインなど他の違法薬物も検出
オピオイド過剰摂取による死亡者の背景を見ると、男性が主体で、非ヒスパニック系白人が多く、25〜44歳が主だった。フェンタニル陽性死亡者の57.0%、フェンタニル類似物質陽性死亡者の51.3%で、コカインやヘロインなど他の違法薬物も検出された。
不法に製造された合成フェンタニルは現在、米国の複数の州でオピオイド過剰摂取死の大きな要因となっており、フェンタニル類似物質はどんどん増えている。O'Donnell氏は「近い将来、フェンタニルと同じようにフェンタニル類似物質の過剰摂取による死亡が急増するかもしれない」との懸念を示した。
(あなたの健康百科編集部)