食道がんと胃がんでは、発がんに及ぼすDNAに関する異常のタイプが異なることを国立がん研究センターのグループが明らかにした。これまでライフスタイルなどから発がんのリスクを推定するしかなかったが、将来的には正常細胞のDNAに関する異常を調べることで正確なリスク判定ができる可能性を示した研究として注目される。Proc Natl Acad Sci U S A.(2018年1月22日オンライン版)で報告された。
食道がん・胃がんではDNAに関する異常のタイプが異なる
schedule 2018年02月06日 公開
点突然変異の蓄積量も測定が可能に
発がんに関連する主なDNAに関する異常にはDNAメチル化異常や点突然変異がある。DNAメチル化は、DNA配列はそのままだがメチル化によって不活化される異常。例えば、ピロリ菌感染による慢性炎症が続くと、胃粘膜細胞のDNAがメチル化され蓄積すると胃がんを引き起こす。
一方、点突然変異は放射線やたばこなどによりDNA配列の1つの塩基が変化してしまうもの。しかし、蓄積量が極めて少ないためこれまで測定することが難しかった。研究グループは正常な組織での低レベルの点突然変異蓄積量を測定する技術を開発した。
今回は、個人のライフスタイルから発がんリスクを3段階に分け、組織におけるDNAメチル化異常と点突然変異の蓄積量を測定した。その結果、食道がんではリスクが上がるごとにDNAメチル化異常と点突然変異ともに蓄積量が増えていた。一方、胃がんではリスクが上がるごとにDNAメチル化異常のみの蓄積量のみ増えており、点突然変異は関連していなかった。
この結果から、正常組織でのDNAメチル化異常や点突然変異の蓄積量を測定することで、食道がんや胃がんの発がんリスクが正確に判定できるようになると期待されている。
(あなたの健康百科編集部)

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