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変形性股関節症の進行度を左右?

 2018年02月13日 06:00

 足の付け根が痛くて立ったり座ったりがつらい、靴下が履きにくい、和式トイレは敬遠するといった人は、股関節の軟骨が徐々にすり減って痛みが出る変形性股関節症かもしれない。京都大学大学院医学研究科の市橋則明教授らは、変形性股関節症に関する研究を実施。病気の進行には、立っているときの背骨の傾きと背骨の柔軟性の低下が大きく関わっていることを突き止めた。研究の詳細は、2017年12月18日の学術誌「Osteoarthritis and Cartilage」(オンライン版)に掲載されている。

患者50人の進行度から改善可能な進行要因を探る

 変形性股関節症は、股関節の痛みや可動範囲の制限、筋力低下などを伴う病気だ。歩行や立ち座りなどの運動機能だけでなく、生活の質にも大きく影響する。日本では120~420万人の患者がいるとされ、女性に多いという。

 この病気は慢性かつ進行性であるため、進行の予防が重要だ。これまでに、骨の形状や構造の異常、遺伝的要素、加齢、女性であることなど、複数の要因が病気の進行に関わっている点が明らかにされている。ところが、これらの要因は、リハビリテーションなどで変化させることができない。そのため、進行を予防するためのターゲットを明確にできず、リハビリテーションでどのような運動に取り組めばよいのかが不明だった。

 そこで今回、研究グループは、リハビリテーションの現場で一般的に測定・評価されている要因のうち、運動によって改善可能なものに着目。それらの中から変形性股関節症の進行に関わる要因を探った。

 変形性股関節症と診断された女性患者50人を対象に、レントゲン画像により骨盤と大腿骨のすき間の幅を測定した。また、股関節の形状や痛み、関節可動域、筋力などを調べた。さらに、背骨の傾きを測定し、立っているときの姿勢と背骨の柔軟性を評価した。

 1年後に再度、レントゲン画像で骨盤と大腿骨のすき間の幅を測定。幅が0.5mm以上短縮し、軟骨がすり減っていた女性を進行群、それ以外を非進行群として、どこで両者の進行度の違いが生じるのかを分析した。

 その結果、股関節の痛みや可動域の制限、筋力低下など股関節自体の問題よりも、立っているときに背骨が前方へ傾くことと、背骨の柔軟性が低下することが、変形性股関節症の進行に関わる重要な要因であると判明した。

 この点について、研究グループは「立っているときの姿勢が悪くなると、股関節に加わる負荷が増し、変形性股関節症に悪影響を及ぼすのではないか。また、立つ・座るなどの日常生活での動作は、股関節と背骨が連動していることが多いため、背骨の柔軟性が低下すると股関節での運動が増し、負荷が増えるのではないか」と推察している。

 これまでに、歩行による股関節への1日の総負荷量が、変形性股関節症の進行に関わることが明らかにされている。今回の研究では新たに、姿勢の悪化と背骨の柔軟性の低下が、歩行時の負荷とは別に、病気の進行に影響を及ぼすことが示された。

 研究グループは、「変形性股関節症のリハビリテーションでは、姿勢や背骨の柔軟性に目を向けることが重要だ。姿勢や背骨の柔軟性は、リハビリテーションの現場で比較的容易に評価することができ、運動によって改善も可能だ」とコメント。今後については「さらに多くのデータを蓄積して、新たなリハビリテーションの開発につなげたい」と展望した。

(あなたの健康百科編集部)

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