喫煙は冠動脈疾患や脳卒中のリスクを増加させるが、喫煙本数を減らせば、そのリスクは低下すると考えている喫煙者は多い。しかし、1日1本の喫煙による冠動脈疾患・脳卒中リスクは予想以上に大きいことが、英・University College LondonのAllan Hackshaw氏らの研究によって明らかになった。この研究結果は、医学専門誌BMJ(2018; 360: j5855)に発表された。
1日1本の喫煙でも心血管リスクは大きい
schedule 2018年02月27日 公開
完全な禁煙を目指すべき
Hackshaw氏らは、1946〜2015年に報告された141件の研究を解析し、喫煙量と冠動脈疾患・脳卒中の発症リスクとの関係について検討した。
検討の結果、喫煙未経験者と比べた冠動脈疾患の発症リスクは、男性では1日1本の喫煙で1.74倍、1日20本の喫煙で2.27倍に上昇し、女性では1日1本の喫煙で2.19倍、1日20本の喫煙で3.95倍に上昇した。男性では1日1本の喫煙によって増加するリスクは、1日20本の喫煙によって増加するリスクの53%、女性では38%に相当した。
喫煙未経験者と比べた脳卒中の発症リスクは、男性では1日1本の喫煙で1.34倍、1日20本の喫煙で1.56倍に上昇し、女性では1日1本の喫煙で1.46倍、1日20本の喫煙で2.42倍に上昇した。男性では1日1本の喫煙によって増加するリスクは、1日20本の喫煙によって増加するリスクの64%、女性では36%に相当した。
Hackshaw氏らは1日1本の喫煙によって増加するリスクは、1日20本の喫煙によって増加するリスクの約5%になると予測していたが、検討の結果からは予測をはるかに超える30~60%に相当することが分かった。
同氏は「今回の研究により1日に1〜5本程度の喫煙の冠動脈疾患および脳卒中に対するリスクは、多くの医療従事者や喫煙者が認識するよりもはるかに高いことが分かった。これは、心疾患を引き起こさない、安全なレベルの喫煙は存在しないことを示している。冠動脈疾患や脳卒中のリスクを有意に低下させるためには、喫煙本数を減らすのではなく、完全な禁煙を目指すべきである」と強調している。
(あなたの健康百科編集部)

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