日本アンチ・ドーピング機構専務理事の浅川伸氏は、日本分析機器工業会と日本臨床検査薬協会の共同開催メディアセミナーで講演し、オリンピックなどスポーツ大会でのドーピング検査の現状を解説した。「アンチ・ドーピング活動はドーピングが行われるという"性悪説"に立って行われている」という通り、厳しい検査体制で「ドーピング逃れ」を出さないよう極めて厳格に行われている。しかし同氏は、スポーツの価値を守り高めるためには必要と、アンチ・ドーピング活動の意義を強調した。
ドーピング違反の件数は?
schedule 2018年03月30日 公開
過去の検体も新検査法で再分析
2016年に開催されたリオ・オリンピックでは、4,882件のドーピング検査が行われた。対象人数は3,237人であり、中には最高6回の検査を受けたアスリートもいる。このうち陽性反応があったのは28検体であり、違反確定が10検体、手続き継続中4検体だった(2016年10月5日時点)。これはオリンピック大会期間中に行われた検査であり、現地に24時間体制で分析可能な実験室を設置して対応をした結果という。
この取り組みとは別に、国際オリンピック委員会(ICO)と世界アンチ・ドーピング機構がタスクフォースグループを設け、大会前からドーピング検査を行っている。ドーピングのハイリスク競技種目やオリンピックで入賞が見込まれるアスリートといった条件を満たす1,333人を抽出。62%に対して何らかの検査を行い、15件の陽性例が摘発された。33%は検体採取ができなかったが、IOCのフォローアップにより、この中から5件の陽性例が見つかった。
ドーピングには、その時点では検出できないドーピング技術が使われている可能性があることから、保存してある過去の検体を新たに分析し直すケースもある。2008年北京大会と2012年ロンドン大会に関しては、リオ大会への参加可能性、2大会でのメダリストなどの条件を満たした検体が再分析された(ただ、10年を超えて訴追されることはない)。この再分析により、北京大会、ロンドン大会、ソチ大会の3大会合わせて139件の違反があり、79人がメダルを剥奪された。ちなみに、国別の違反件数は、ロシアが71件と最も多かった。
アンチ・ドーピング活動について浅川氏は、「イコールコンディションで試合に参加するというアスリートの権利を守り、さらにはスポーツそのものの価値を保つのが目的」とまとめた。
(あなたの健康百科編集部)

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