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「患者参加型医療」とは何か?

 2018年04月13日 06:00

 医療安全は、誰もが医療に対して真っ先に求めるものだが、実現はそれほど簡単ではない。医療情報の公開・開示を求める市民の会代表世話人などを務める勝村久司氏は、「患者参加型の医療が医療安全の鍵を握る」と語るが、患者参加とは「医師にお任せ」の対極であり、患者や家族に新たな負担を課すものでもある。医療の主役である患者は医療安全のために何ができ、何をすべきなのか。第4回日本医療安全学会における勝村氏の発表は、新時代の患者像を提示している。

患者参加の促進だけが置き去りにされていた群大病院

 群馬大学病院で腹腔鏡を用いた肝臓手術後の死亡例が相次いだ問題で、昨年(2017年)9月、新事故調査委員会に対して、病院側が院内改革の進展状況を報告する会議が行われた。その際に、2016年の同委員会の提言で強調されていた「患者参加の促進」の取り組みが、全く進んでいないことが明らかになったという。なぜ、病院は患者参加の促進に取り組まなかったのか。同委員会委員でもある勝村久司氏が報告した。

 昨年の報告会議の時点で、委員会の改革提言に基づいて多数の取り組みが進行しており、委員たちも高く評価していた。ところが、「患者参加の促進」の取り組みだけが、全く進められていなかったという。

 なぜ、「患者参加の促進」が行われなかったのか。勝村氏は「病院側は、医療安全と患者参加は関係ないものと考えている節があった」と語る。委員会の提言では「すべての医師が、クリニカルパス(治療計画書)や検査結果データの写しを外来患者に提供することを原則とするシステムを、向こう1年間を目途に構築する」としており、同氏はこうした取り組みが「患者を中心としたチーム医療となり、それが医療安全を担保する」と強調した。

カルテ開示は単なる患者サービス?

 同様に委員会が提案した患者本人や家族との診療録(カルテ)共有について、同氏は「病院は、カルテ開示は単純に患者へのサービスと捉えていたのではないか」と考察した。実際に、腹腔鏡手術による死亡事故発覚時は、医師の診療録の記載が不十分であったために、スタッフ間さらに患者との間でも適切な情報共有がなされていなかった。また、術後の容体悪化や死因についての説明もおろそかであったと報告されている。同氏は「積極的なカルテ開示と、当事者同士が誠実に話し合うオネストトーキングは、信頼関係構築のための必須だ」と述べた。

 さらに、委員会は症例検討会(カンファレンス)への患者や家族の参加を推奨したが、同氏は「こうした取り組みを行っている施設はまだ少ないかもしれないが、患者を含めたカンファレンスこそが本当のインフォームド・コンセントではないか」と訴えた。

再発防止策を作って終わりではない

 そして、この日からあらためて群大病院は、「患者参加の促進」の取り組みに着手することになったという。

 勝村氏は「事故調査委員会は、再発防止策を報告書に記載して終わりにしてはいけない。その防止策が、どのように現場で生かされているかを確認する作業が必要で、その結果を遺族に報告しなければならない。そこまでがなされて初めて、遺族にとって信頼のおける事故調査となり、遺族は心の整理ができる」と指摘した。

 発表後のわれわれの取材に対し、同氏は「最近の病院からの報告によると、ようやく『患者参加型医療推進ワーキンググループ』を設置して議論を始めているようだ」と述べた。

(あなたの健康百科編集部)

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