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「更年期障害」に耳を傾ける

 2018年05月01日 06:05

 更年期に関する医療情報の普及とともに、更年期障害に苦しむ患者への対応が問題となっている。老後まで見据え、総合的な視野での心身のケアを行うことが求められている。春日クリニック(熊本市)院長の清田眞由美氏によれば、患者は、不眠や全身倦怠感、ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ、多汗)、頭痛、肩こり、便秘、胃部不快など多彩な症状で来院するという。「どこの診療科を受診してよいか分からない」、「数カ所の医院を並行して受診しているが、改善しない」などと途方に暮れている。

社会的な背景をさぐる

 更年期世代は"家族の要"的な存在である。地域や職場でも頼られる世代だが、加齢によって無理がきかなくなる。内分泌学的にはエストロゲンの減少がそれに拍車をかけ、免疫力やストレス耐性が低下する()。ただ更年期障害は、内分泌的な要因のみで判断するのではなく総合的な観点から考察することが必要である。

図. 更年期障害の考え方

(日本更年期医学会編: 更年期医療ガイドブック. 金原出版株式会社、2009年から)

 同クリニックでは、患者に受診歴や検査歴を尋ね、更年期障害の背景にある社会心理的問題、性格的な特性をさぐっている。「1人で複数の親の介護をこなし休息がとれない」、「子どもの受験と夫の失職が重なり自分の求職が必要となった」、「職場での人間関係の悪化がストレス」などの訴えからは、さまざまな社会的な背景を垣間見ることができる。医師はこれらを念頭に置く必要があると清田氏は指摘する。

 一方、患者本人はそれら社会的な要因に気付いていないことが多い。そのため、時間をかけた問診、傾聴が重要となる。問診の中で、患者がさまざまな質問に答えるうちに自ら問題点に気付き、生活の仕方や考え方のパターンが変わってくるという。自分の訴えを受け入れてもらえたことで不安が解消したと話す人も多い。

更年期世代の意見交換の場を

 「更年期世代は、これまで頑張ってきた時期からのギアチェンジがうまくできず、周囲への援助を求めるのが苦手。自分の不調を表現して周囲を不快にするのは申し訳ないと気づかう」。そのため清田氏は、まず患者に更年期の原因を説明した後、体調不良を家族に打ち明け支援を求めることを提案する。快復した患者は、「なぜこれまでひとりだけで無理をしてきたのか、不思議だ」と話す者もいる。

 また更年期外来に来る患者の多くは何らかの精神症状がある。睡眠が浅い場合、睡眠導入薬や漢方薬の処方でいっそうの悪化を防ぐことができる。抑うつ傾向が強い場合は、本人と相談の上で精神科受診を勧めることもある。

 さらに同クリニックでは、年に5回、更年期世代との交流の場として「おりひめの会」(http://www.seisinkai.or.jp/orihime.html)を開催している。日常診療では伝え切れない更年期の迎え方や過ごし方、管理栄養士による食事指導、理学療法士による運動の指導、ケアマネジャーによる介護保険の利用法、看護師による介護の仕方など、折々のニーズに合わせて話題を選び意見交換を行っている。

 清田氏は「更年期世代が生きがいをもって頑張ることができるように、家庭や職場、地域での環境整備支援をすることは、地域医療を担うかかりつけ医の大切な仕事である」と訴える。

 (あなたの健康百科編集部)

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