子育て中のパパやママにとって、小さい子どもに苦い薬を飲ませるのは一苦労だ。最近は従来のオブラートに加え、薬を混ぜたり包み込んだりする「服薬ゼリー」といった商品も販売されているが、近い将来、なんと牛肉が薬の苦味を消す役割を果たすようになるかもしれない。Journal of Agricultural and Food Chemistry(4月29日オンライン版)に掲載された論文によると、牛肉のタンパク質はペプチドに分解されると、舌の苦味受容体を遮断することができるという。
薬の苦味ブロックには牛肉が効果的?
schedule 2018年05月29日 公開
牛肉由来のペプチドに苦味抑制効果
甘味や酸味、苦味などの味を感じているのは、舌にある味覚受容体だ。そのうち、苦味を感じる苦味受容体はT2Rと呼ばれ、人間には25種類も備わっている。これまで食品メーカーや製薬メーカーは、この苦味受容体T2Rの働きを阻害しようと繰り返し試みてきたが、近年、タンパク質の加水分解によって得られる生理活性ペプチドが、苦味や炎症を軽減する物質として注目を集めている。
そこで研究グループは、アルカラーゼ、キモトリプシン、トリプシン、ペプシン、フレーバーザイム、サモアーゼという6種類の酵素で牛肉のタンパク質を加水分解し、さまざまな味覚を測定して数値化する「電子舌」を用いて検証を行った。その結果、トリプシンとペプシンから作られたペプチドが、苦味剤としても使われるキニーネの苦みを最も効果的に抑制することが分かった。
研究グループは「この結果は食品メーカーだけでなく、製薬メーカーにも影響を与える可能性がある」とコメントしている。牛肉といえば、ステーキやハンバーグといった料理の食材としてのイメージが強いが、近い将来、製薬のプロセスにおいても重要な位置を占めるようになるかもしれない。
(あなたの健康百科編集部)

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