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意外と多いサナダムシ感染

 2018年05月30日 06:00

 寄生虫関連の食中毒の原因として、アニサキスはよく耳にするかもしれない。しかし、条虫(成虫が真田紐に似ていることからサナダムシと呼ばれる)感染による食中毒患者も少なくない。サナダムシ感染症は症状が軽いため無視されやすい上に、症状の発現が遅く原因食品を特定するのが難しい。国内のサナダムシ感染の現状について国立感染症研究所寄生動物部の山﨑浩氏に話を聞いた。

肛門からきしめん状のものが垂れ下がる

 サナダムシは、魚を食べて感染するものと、豚肉や牛肉を食べて感染するものの2グループに大きく分けられる()。いずれもテープ状の長い虫で、見た目は似ている。サナダムシが寄生する肉や魚を食べて感染すると、2〜3週間後に肛門からきしめん状の成虫が垂れ下がってきて、初めて感染に気付くことになる。成虫の体長は時に10mを超えるという。

表. 日本で見いだされる条虫とその感染源

(山﨑浩氏提供)

 山﨑氏らがデータを調べたところ、日本のサナダムシ(魚に寄生するもののみ)の感染は、年間300〜500件ほどであった。魚に寄生するサナダムシの中でも国内で圧倒的に多いのは、サケ(トキシラズ、サクラマスなど)に寄生する日本海裂頭条虫という種類である。サナダムシ感染症の主な症状は、軽い腹痛や軽い下痢など。同氏は「肛門から虫が出てくるので、精神的なダメージの方が大きいかもしれない」と述べている。

 サナダムシの感染者数は多くても、症状が軽いことからあまり問題視されない。そのため、サケを食べて感染するということも、あまり知られていないという。サケの筋肉に存在するサナダムシの幼虫は肉眼でも確認できるが、知らずに食べてしまうことが多い。トキシラズやサクラマスからはサナダムシが見つかっているが、同じ白鮭でもアキザケからはこれまで見つかったことはないという。

高級魚が感染源だが感染者は多い

 トキシラズやサクラマスは高級魚とされ、一般的な回転寿司屋や居酒屋のサケは、チリ産の養殖ニジマス(トラウトサーモン)やノルウェー産の養殖アトランティックサーモンがほとんどである。山﨑氏は「あまり市場に出回らない高級魚が感染源なのに、感染者が多いのが不思議だ」と述べ、「サケが日常的にエサとしヒトも食べる小魚にも幼虫が寄生しているかもしれない。これまでに見つかってはいないが、可能性はあるのではないか」と考えている。

 同氏は、サナダムシ感染患者には必ず食べた魚の種類を尋ねているが、多くの場合、複数の魚を食べており、どの魚から感染したかは特定できないという。また、アニサキスなどは食べたらすぐに症状が出るため感染源を特定しやすいが、サナダムシの場合は症状が出るのは2〜3週間後になるため、感染源の特定は困難である。最初の症状はおしりから虫が出てくること。魚に寄生するのは幼虫だが、ヒトの肛門から出てくるのは成虫である。

十分な加熱、よく噛むことで感染リスクは減らせる

 アニサキスは、サケを薄く切った場合、光にかざすと細長い幼虫を見つけることができる。サナダムシの幼虫は小指の先ほどの白い物体なので、白く見える脂肪とは区別可能だが、認識していないと知らずに食べてしまうことが多い。寄生虫入りの刺身であっても、よく噛んで食べればアニサキスもサナダムシも感染はしない。あまり噛まずに食べることによって感染が成立する。

 サナダムシは、自然界ではクマ、キツネ、イヌ、ネコなどの体内で成虫になる。ヒトの体内でも成虫になるが、これはサナダムシにとって不本意で、子孫を残すことができなくなる。野生動物の体内で成虫になれば、サナダムシの卵は便と一緒に排出され、孵化した幼虫が海に流れて、魚に食べられ、その魚を動物が食べるというサイクルが回らなくなるからだ。

 養殖ものでの感染報告はほとんどないが、同氏らは海外の養殖場でニジマスや銀鮭にサナダムシの幼虫が寄生しているのを見たという。輸入品でも冷凍ならよいが、冷蔵では幼虫は死なないので感染のリスクがある。山﨑氏は「サナダムシに感染するのは、生や半生(加熱不十分)で食べた場合である。魚も肉も、よく焼いて食べれば問題ない。また、魚を生食する場合には、よく噛んで食べることで感染リスクを減らせる」とアドバイスしている。

(あなたの健康百科編集部)

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