肘や膝など動きの激しい患部に貼る粘着フィルムは剥がれやすい。米・マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループは、日本をはじめとするアジアの伝統工芸であり、折り畳んだ紙を切り抜いて模様や立体をつくる「切り紙」からヒントを得た粘着フィルムを作製。シートに細かな切れ込みを入れることで、肘や膝を100回曲げても剥がれないほど粘着力を高めることができたと、Soft Matter(2018; 14: 2515-2525)に報告した。
日本の伝統工芸が患部に貼る粘着製品に
schedule 2018年06月22日 公開
切れ込みが張力を分散し、粘着力を高める
薄い膜状の粘着フィルムは、医療用ばんそうこうやウエラブルデバイスなどの医療製品に用いられてきた。これまで、フィルムの粘着力を持続させるには、フィルムを薄くする、柔軟な素材を用いる、粘着性自体を高めるといった方法が取られてきた。しかし、こうした方法には限界があり、例えば、フィルムを薄くし過ぎると、耐久性が下がる。
そこで研究者らは、フィルムの厚さ、硬さ、接着性を変えることなく、フィルムに切り紙のような切れ込みを入れることによって粘着力を高める方法を開発した。
研究グループは、切れ込みを入れたフィルムを被験者の膝に貼り付けて、強度実験を行った。被験者が膝を曲げると、膝が最も大きく曲がる中央部ではフィルムの切れ込みが大きく開いたが、端の切れ込みは閉じたままで、フィルムは皮膚から剝がれなかった。これは、開いた切れ込みが皮膚からフィルムが剝がれる原因となる張力を分散するためで、切れ込みによりフィルムの伸縮性が増すだけでなく、粘着力も増すことが分かった。
さらにフィルムの応用性を実証するため、それぞれ切れ込みを入れた①ばんそうこう②ヒートパッド③ウエラブル電子フィルム-を被験者の膝に貼付し、粘着力がどの程度持続するかを検討した。その結果、3つ全てが、100回膝を曲げても皮膚から剝がれることなく、正常に機能した。
研究者グループは、この技術を活用した医療用貼付剤の製造開発を進めており、「シートの素材を変えることで、薬剤を直接的に皮膚に拡散させることが目標だ」と話している。
(あなたの健康百科編集部)

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