薬の上向きゴックンはNG!
2018年08月08日 06:00
薬局で受け取る薬。錠剤、粉薬、カプセルにシロップ。それから、塗り薬に貼り薬。薬の種類によって使用方法や保管方法が違うことはご存知ですか?錠剤は上を向いて飲んではいけない、アレルギー用目薬は冷蔵庫で保管しない!?...など、知っているようで知らなかった、正しい薬の飲み方や使い方、保管方法などを薬剤師さんに聞きました。
錠剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤の飲み方
錠剤:一般的に水に沈むものが多い錠剤。上を向いて薬を飲み込もうとしていませんか。しかし、その方法は改めた方がよいかもしれません。気道確保の際に顎を持ち上げる状態を思い浮かべてください。顎を上に向けると気道が開くため、薬や水が誤って気管に入ってしまう誤嚥※1が起きやすくなります。
※1誤嚥したものによる窒息や、気管や肺で細菌が繁殖する誤嚥性肺炎を引き起こし、命に関わることもある
気道確保時の「頭部後屈顎挙上法」
カプセル剤:カプセル剤は水に浮きます。上を向くと、ますます飲み込みにくくなることは想像できますね。
粉薬:ドライシロップや漢方薬のエキス顆粒などは、簡単に水に溶けます。粉のまま飲みにくい場合は、水やお湯に溶かして服用することもできます。
いずれの場合も、薬は正面向き、あるいは少し顎を引いた状態で飲み込むことをおすすめします。
高齢者、乳幼児の服用の注意点
高齢者:高齢者では特に、口に含んだものを飲み込む嚥下機能が低下していて、誤嚥しやすくなっている方が多いです。水と薬をたくさん口に含んで、上を向いて一気に飲み込む方法は危険ですので、行わないでください。
乳幼児:小さなお子さんは、お腹がいっぱいになると薬を飲みたがらないことがありますね。食後の用法で処方されていても、食前に服用しても問題ない薬がありますので、薬剤師に相談してください。
また、乳幼児用の粉薬は、飲みやすくするためにジュースやゼリーと混ぜて服用する機会も多いですが、組み合わせによっては薬の効果に影響したり、苦味が増して余計に飲みにくくなるものもあります。どのような飲み方がよいか、薬剤師に確認してください。
例:オレンジジュースと抗菌薬を混合する場合
クラバモックス→飲みやすくなる
クラリス→苦味が増して飲みにくくなる
錠剤は勝手に割ったり砕いたりしてはならない
錠剤には、薬の成分が少しずつ溶け出していくように作られたものがあります。こうした錠剤を割ったり砕いたりすると、薬の成分が急激に溶け出して副作用を起こしたり、薬の効果が早く切れて病状が悪化したりする原因になります。
例
アダラートCR錠(高血圧や狭心症の薬:砕くと吸収が早まり、低血圧を起こす恐れがある)
インヴェガ錠(統合失調症の薬:砕くと薬が効き過ぎたり、効き目が早く切れたりする)
アサコール錠(大腸の炎症を抑える薬:砕くと大腸まで薬が届かなくなる)
貼り薬、塗り薬でも他人に譲ってはダメ!
薬の中でも特に、貼り薬や塗り薬は家族・友人間での使い回しをしてしまいやすい薬です。「たかが貼り薬」「たかが塗り薬」と油断していると、思わぬ副作用を起こす恐れがあります。自分以外の人に処方された薬を使って副作用が起きた場合は、たとえ家族の薬であっても医薬品副作用被害救済制度※2を受けることができません。自分に処方された薬は、絶対に他人に譲ってはいけません。
※2 医薬品副作用被害救済制度とは、医薬品を適正に使用したにもかかわらず、その副作用により重篤な健康被害が生じた場合に、医療費や年金などが給付される公的な制度のこと
それぞれの薬に適した保管方法を薬剤師に確認しよう
薬は、個々の性質に応じた保管をする必要があります。冷所で保管すべきものもあれば、冷所に保管してはいけないものもあります。「薬は薬箱に」と十把一絡げにすることなく、それぞれに適した方法で保管するようにしてください。
例:冷所に関する注意
・凍結注意:未使用のインスリン注射は冷所で保管する必要がありますが、凍結すると薬がダメになってしまいます。冷蔵庫内でも冷風が直接当たらないドアポケット等に、外箱のまま保管することをお勧めします。
・冷所を避ける:アレルギー治療に用いるリザベン点眼液を冷蔵庫などで保管すると、成分が結晶になってしまうことがあります。そのため、室温で保管する必要があります。
抗生物質や抗ウイルス薬は飲み切る
「症状が治まったから」と途中で止めてしまうと、細菌やウイルスが耐性を持ち、次から薬が効かなくなってしまう恐れがあります。抗生物質や抗ウイルス薬は、症状が治まっても最後まで飲み切るようにしましょう。
自己判断で中断しない
何か薬で副作用が出た際には、自己判断で止めて治療を放棄せず、医師・薬剤師に副作用の症状を伝え、どう対応すればよいかを相談するようにしてください。
【児島 悠史氏プロフィール】
京都薬科大学大学院修了後、薬局薬剤師として活動。「誤解や偏見によって生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、日々の服薬指導のほか、Webサイト「お薬Q&A~Fizz Drug Information」を運営。医学論文などを情報源とした信頼性のある医療情報や、国民の情報リテラシー向上を目的とする記事を配信。近著は、「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100」。PharmaTribuneにて、薬剤師向けに健康情報の解説記事を連載中。