世界人口の高齢化は急速に進んでおり、60歳以上が占める割合は2000年の11%から2050年には22%に倍増するとの試算もあり、2017年には65歳以上の人口が5歳以下を初めて上回った。高齢者の健康状態、特に身体活動能力は、医療経済など社会に与える影響が極めて大きい。多くの研究で、運動により身体的な活動レベルを高く保つことが高齢者にも好ましいことが示されている。とはいうものの、高齢者に運動を続けさせること自体が難しく、その好み〔回数、強度、環境(1人か他の人と一緒に行うか)など〕に合わせたトレーニングメニューの提供が必要だ。では、高齢者はどの位の強度、回数の運動なら実行、継続できるのか。また、どのような運動環境(屋内か屋外か、1人か大勢かなど)を好むのか。それらを明らかにすべくノルウェーで行われたのがGeneration 100研究だ。同研究を行ったノルウェー科学技術大学のLine Skarsem Reitlo氏らは、"きつい~かなりきつい"運動を週2回行った高強度グループと"楽~ややきつい"運動を週2回行った中強度グループの1年間のデータを解析し、その結果を英医学誌BMC Geriatrics(2018年9月10日オンライン版)に報告している。
70歳代の高齢者で運動はどこまでできる?
schedule 2019年01月21日 公開
最も高いウォーキング選択率、屋外が好まれる傾向に
高強度グループには、"きつい~かなりきつい(主観的な運動強度ボルグスケール16または最大心拍数の85~95%の負荷)"週2回(10分ウォームアップ+4分×4回)のインターバルトレーニングが、また中強度グループには"楽~ややきつい(同スケール13または最大心拍数の70%の負荷)"週2回(50分)の持続的トレーニングが課された。また、両グループには週2回の自由参加のトレーニングセッションが設けられた。
このセッションでは参加者が自由に運動(ウォーキング、ランニング、クロスカントリースキー、エアロビクスなど)を選択した。
参加した高齢者618人(70~77歳)のデータを解析した結果、以下のことが明らかになった。
- 両グループとも1年間を通し平均週2回超の運動が実行された
- 両グループともにベースにウォーキングを選択する割合が最も高かった
- 中強度グループでは「ウォーキング+筋トレ」のを行う割合が高かった
- 高強度グループではサイクリングを選択する割合が高く、耐久・筋トレ、ジョギング、スイミングを組み合わせる率が高かった
- 両グループともに大半が屋外で行われ、寒い時期と温かい時期とで差はなかった
- 1人で行う割合と他の人と一緒に行う割合について両グループ間に差はなかった(両グループともそれぞれ約50%)。両グループとも他の人と一緒に行う割合は男性に比べて女性で有意に高かった
研究者は、この研究により高齢者でもきつめの運動が厳格な管理なしで長期間行えることが示され、医療従事者や研究者が高齢者の運動プログラムを開発し、長期間参加させる方法を模索するための貴重な情報が得られたとしている。ウォーキングの選択率が高かった理由については、高齢者にとって比較的安全でコストがかからず、手頃な点を挙げている。このあたりは、日本人にも当てはまりそうだ。
研究は日本と気候や風土の違うノルウェーで行われたものだが、70歳代の高齢者でも比較的強度の高い運動が行え、継続できるという結果は、高齢化が急速に進む日本人にも希望を与えるものだ。日本でも高齢者の運動に対する同様の研究が進み、高齢者に適した運動プログラムが明らかになれば、"高齢者が元気な社会"をつくる足がかりになるかもしれない。
(あなたの健康百科編集部)

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