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双極性障害の"多様性"を1つに

 2019年01月22日 06:00

当事者発信サイト『BIPOGRAPHY』とは

 うつ病と比べると、まだまだ病名そのものがあまり知られていない双極性障害。気分が沈んだりする「うつ状態」と、逆に気分が高揚したり怒りっぽくなったりする「躁状態」が交互に現れるのが特徴だ(関連記事1関連記事2)。しかし、何がきっかけでうつ状態や躁状態になるのかや治療薬以外の独自の対処法はまさに千差万別。そこで誕生したのが、そのような個々の当事者が持つ情報や知識を1つのサイトにまとめた「BIPOGRAPHY(バイポグラフィー)」というプロジェクトだ。自らも当事者であり、このプロジェクトを1人で立ち上げた白楽たまきさんと、スタッフ第1号として運営に携わる松平義男さんに話しを聞いた。

個々の当事者が持つ情報や知識を共有
病気と上手に付き合うヒントを

 「BIPOGRAPHY」のトップ画面には、「双極性障害ナレッジベースサイト」と表示されている。データを蓄積するのがデータベースなら、情報や知識などを意味する"ナレッジ(knowledge)"を蓄積するのがナレッジベースだ。「BIPO」とは、「双極性(障害)」を意味する英語のBipolarから取った。

  当事者同士、病気のつらさは共有できても、症状や治療法以外の独自の対処法は多種多様で、共通点は容易には見いだせない。「風邪なら、症状や対処法はほとんどの人で共通するが、双極性障害は躁状態あるいはうつ状態に転じるきっかけが人それぞれ。当事者が持つ情報や知識を一元化すれば、サイトを見た人が病気と上手く付き合うヒントを得られるのでは」と白楽さんは説明する()。

 
図. 白楽さんがイメージする双極性障害当事者が持つ症状や対処法の多様性

 (白楽たまきさん提供)

  クラウドファンディングで運営費用を調達した白楽さんは、2017年12月に1人でサイトをスタートさせた。すると、"うつ状態になると、声を出すことすら面倒になる"とか、"季節や天候で躁状態やうつ状態になる"などの個別の症状が投稿された一方、"ラジオ体操を習慣付けてうつ状態を解消した"とか、"いらついても6秒我慢する"といった独自の予防法や対処法など、多くの情報が寄せられた。 

スタッフを志願する人も
認知度向上や非当事者向けコンテンツの充実を図る

  当事者個々の症状や対処法だけでなく、服用する薬に関する情報や就学・就業など日常生活における悩みや工夫といった情報が集まり、サイトのオープンから1年が経過した現在、情報提供者数は84人、投稿数は400件に上る(2019年1月6日現在)。投稿者の中には、松平さんのように「何か自分に手伝えないか」と申し出る人も現れ、スタッフは当事者を中心に7人に増えた。

  サイトの運営は、白楽さんの期待以上に順調のようだ。だが、「病名と同じく、サイト自体の認知度はまだ低い」と課題を挙げる。サイトの認知度向上のためには、病名そのものをより多くの人に知ってもらう必要がある。病気について、白楽さんや松平さんは職場でオープンにし、周囲の理解や協力を得ているが、偏見や差別、誤解を受けている当事者も少なくないのが現状だ。

  双極性障害は、現代医学では完治は難しいとされている。だが、白楽さんは希望と期待を込めて、「このプロジェクトは、病気が解明されるまでの"つなぎ"」と言い切る。そのために当事者として、サイトを通じた病気の認知度と理解度の向上を切に願っている。現時点では任意団体として活動中だが、今年度中にNPO法人化し、当事者以外の人たちに向けた情報発信も計画している。 

(あなたの健康百科編集部)

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 【関連リンク】
「BIPOGRAPHY」公式サイト

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