乳幼児アレルギー抑制に関する研究が支援呼びかけ
2019年03月06日 06:00
最近、患者が著しく増加している乳幼児アレルギーの発症をなんとか抑えたい−。母乳に含まれる免疫物質とアレルギー発症の関連を検討している静岡大学学術院農学領域准教授の茶山和敏氏らは、乳児アレルギーの原因解明に向けた研究へのクラウドファンディングによる支援を呼びかけている。
母乳中の免疫関連蛋白質に注目
「母乳中の免疫成分量と乳児アレルギーとの関係を調べたい!」と命名されたこのプロジェクトは、静岡大学と日本初の学術系クラウドファンディングサービスacademistを運営するアカデミスト株式会社が共同で行っている。
茶山氏らは、2015年にマウス(ハツカネズミ)やヒトの母乳に含まれる免疫関連蛋白質CCL25を世界で初めて発見。マウスを用いた研究により、母乳中のCCL25が新生仔マウスの免疫器官の発達や免疫機能に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。
そして、母乳に含まれるCCL25の割合は個人差が大きいため、CCL25が極端に多いまたは少ない母乳を飲んで育った乳児は免疫機能が他の乳児と異なり、そのことが乳児アレルギーの発症に関係しているのではないかと仮説を立てた。
約2,000の母乳サンプルを分析するための資金が必要
そこで、茶山氏は千葉大学小児病態学講座教授の下条直樹氏らと共同で、母乳のサンプル採取に協力してくれた母親と生まれた子どもを対象に、母乳に含まれるCCL25などの成分とアトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患との関連を検討するコホート研究※を開始。
※開始時点で、研究対象の病気にかかっていない集団(コホート)を一定期間観察し、特定の要因の有無と病気の発生または予防との関連を調べる研究方法
これまでに500人の母親から母乳サンプルを4回(生後7日以内、1、6、9カ月目)ずつ採取。500人×4回=2,000検体について、母乳に含まれるCCL25など4種類の免疫関連蛋白質を分析するための費用(4×35万円=約140万円)と分析に使う消耗品代(約10万円)で合計150万円の調達を目指している。
CCL25に関する研究は、ヒトでの研究結果が全く出ていない分野であり、外部からの資金援助が難しいため、クラウドファンディングによる支援募集を思い立ったという。
出資者には数々のリターンを用意
茶山氏らは今回の研究結果を基に、より大規模な研究プロジェクトを立ち上げることを目標としており、「本プロジェクトのテーマである母乳に関する研究は、次の世代を担う子どもたちの成長や子どもたちがかかるアレルギー疾患の予防、治療に直接かかわるテーマですので、ぜひともご協力をよろしくお願いします」と呼びかけている。
今後、今年(2019年)4月に実験を開始し、12月には国際フードファクター学会、日本食品免疫学会、日本免疫学会などでの発表、来年1月の論文執筆を予定している。
なお、出資者には研究報告レポート(PDF版)の送付、サイエンスカフェへの参加権をはじめ、レポートや学会発表資料への氏名掲載、研究室見学ツアーなどのリターンを用意している。
資金支援のリターン(還元)の一例(全例に寄付金受領証明を発行)
※詳細は「母乳中の免疫成分量と乳児アレルギーとの関係を調べたい!」公式サイトを参照
◆1,000円
・研究報告レポート(PDF版)
◆5,000円
・研究報告レポート(PDF版)2報、2報目のレポートに氏名掲載
◆1万円
上記に加え
・サイエンスカフェ参加権
◆5万円
上記に加え
・研究室見学ツアー
・学会発表資料の謝辞に氏名掲載
◆10万円
上記に加え
・学会発表講演要旨の謝辞にお名前掲載
◆30万円
上記に加え
・出張講演
・論文謝辞にお名前掲載
(あなたの健康百科編集部)