宇宙飛行でヘルペスウイルスが再活性化!?
2019年03月29日 06:00
1969年にアポロ11号が月面に着陸してから、今年で50年。人類による宇宙開発は着実に進展し、民間人による宇宙旅行計画も続々と発表されている。しかし、アメリカ航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センターの研究チームによると、半数以上の宇宙飛行士において、ヘルペスウイルスの再活性化が認められたという。
飛行中にストレスホルモンが上昇
ヘルペスウイルスには、口唇ヘルペスや性器ヘルペスを引き起こす単純ヘルペスウイルス(HSV)など8種類が存在する。このたび宇宙飛行士から検出されたのは、HSVの他、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)、伝染性単核球症の原因となるサイトメガロウイルス(CMV)とエプスタイン・バーウイルス(EBV)の計4種類だ。
ヘルペスウイルスは一度感染すると、ヒト体内の宿主細胞に留まり、休眠(潜伏)状態となる。ところが、疲労やストレスによって再活性化すると、増殖したウイルスが全身に広がり、症状を表す。
研究チームは、宇宙飛行前、飛行中、帰還後の宇宙飛行士から、それぞれ唾液、血液、尿のサンプルを採取して検体を分析した。その結果、10〜16日間にわたるスペースシャトル滞在中の89人の宇宙飛行士のうち47人(53%)と、国際宇宙ステーションに180日以上滞在中の宇宙飛行士23人のうち14人(61%)の唾液と尿から、ヘルペスウイルスが検出された。この数字は、宇宙飛行前および帰還後より明らかに高い値だった(Front Microbiol 2019; 10: 16)。
研究チームのサティシュ・メータ氏によると、宇宙飛行中にはコルチゾールやアドレナリンといった、免疫系を抑制するストレスホルモン分泌の上昇が認められたという。免疫細胞にはヘルペスウイルスを抑制する働きがあるが、飛行中と帰還後60日間は、その働きが低下していた。
人類は今後、月や火星を超えて、はるか宇宙の彼方まで到達することも予想される。メータ氏によると、VZVとCMVは国際宇宙ステーション帰還後も30日間は体液内で検出されており、その規模、頻度、期間は宇宙飛行の長さとともに増大するという。メータ氏は、「宇宙開発の成功には、ウイルス再活性化への対策が必要不可欠だ」と主張している。
(あなたの健康百科編集部)