産後うつが子どもの言葉の発達に影響
2019年04月01日 06:00
出産後に抑うつ気分や不安、意欲低下などの症状が現れる産後うつは、出産女性の10~20%が経験するとされている。浜松医科大学子どものこころの発達研究センターなどの研究グループは、同センターが実施する「浜松母と子の出生コホート研究」のデータを解析。母親の産後うつが、子どもの言葉の発達をおよそ3 年間にわたって遅らせる可能性があることを明らかにした。詳細は、「PeerJ」(2019; 7: e6566)に掲載されている。
解析対象児は969人
産後うつは、子どもの発達にさまざまな影響をもたらす可能性があり、特に話し言葉の発達への影響が注目されている。過去の研究から、産後うつが母親と子どもの絆の形成を遅らせ、それに伴い言葉の発達も遅れる可能性が指摘されている。しかし、子どもを長期的に追跡した大規模研究はほとんどなく、定かではない。
そこで研究グループは、同センターが2007年に開始した「浜松母と子の出生コホート研究」のデータを利用し、母親の産後うつが子どもの話し言葉の発達に及ぼす影響について検討した。
母親を産後うつの発症時期により、①産後1カ月以内に発症した早期発症群②産後1~3カ月に発症した後期発症群③発症していない対照群―に分類。各群の母親から生まれた子どもを約40カ月にわたって追跡し、話し言葉の発達パターンを解析した。話し言葉の発達は、Mullen Scales of Early Learningという尺度を使って、10、14、18、24、32、40カ月の各時点での偏差値を算出して評価した。
解析対象となった子どもは969人。そのうち早期発症群は103人、後期発症群は43人、対照群は823人だった。
後期発症群の子は1歳半以降に言葉の発達の遅れ顕著に
母親のうつ病または気分障害/不安障害の病歴、子どもの性、出生順、双子の出産、出生時体重、在胎週数、母乳哺育の期間、出生時の父母の年齢、世帯年収、父母の教育レベルを調整して解析したところ、対照群の子どもと比べて早期発症群の子どもでは、全ての時点において話し言葉の偏差値に低下は見られなかった。一方、後期発症群の子どもでは18カ月以降、偏差値に明らかな低下が示された。
研究グループは、今回の研究結果について「産後早期に発症した産後うつは、3歳過ぎまでの話し言葉の発達にほとんど影響を及ぼさなかった。しかし後期に発症した産後うつは、子どもの話し言葉の発達を1歳半ばから明らかに遅らせ、少なくとも3歳過ぎまで持続することが明らかになった」として、産後1カ月で終わりになることもある産後うつに対するスクリーニングの期間を、「産後3カ月まで延ばすべき」とコメントしている。
(あなたの健康百科編集部)