脳卒中生存者の60%に新たな視覚障害
2019年04月12日 06:00
脳卒中によって脳の視覚に関連する部位に損傷を受けた場合、視野の障害を併発することが多い。この脳卒中後視覚障害はしばしば過少報告されており、疫学的特徴も明らかでない。英・University of LiverpoolのFiona J. Rowe氏らは、英国の急性期脳卒中ユニットに入院した脳卒中生存者を対象に、視覚障害に関する前向き調査を実施。その結果、脳卒中後に新たに視覚障害を発症した割合は60%と極めて高かったと、PLoS One(2019; 14: e0213035)に報告した。また、脳卒中発症後3~7日以内に視覚のスクリーニングを行い評価することはおおむね実施可能で、脳卒中後視覚障害への早期介入やケアの改善につながるとしている。
脳卒中後視覚障害発生率と視覚評価時期を検討
これまで、脳卒中後に新たに視覚障害を発症した患者数について報告した文献はない。脳卒中生存者のニーズを把握して適切なケアを提供するには、脳卒中後視覚障害の新規発症数や視覚評価のタイミングに関する正確な情報が必要になる。そこでRowe氏らは、脳卒中後視覚障害の新規発症率と有病率を前向きに調査し、早期の視覚評価が実施可能なタイミングについて検討した。
中心視力障害や眼球運動異常が高率
2014年7月~15年6月に英国北西部の超急性期/急性期脳卒中ユニット3施設に入院した、18歳以上で発症2週間以内の急性期脳卒中患者1,295例のうち、視覚評価を完了した1,033例(男性52%、平均年齢73.3歳、虚血性脳卒中87%)を対象に解析した。視覚評価は脳卒中発症後3日め(中央値)に視能訓練士による視覚スクリーニングが行われた。
脳卒中後に新たに視覚障害を発症した患者は616例(全脳卒中入院患者の48%、脳卒中生存者の60%)存在した。以前から目が悪かった患者を含む視覚障害の有病率は、生存者全体で73%(1,033例中752例)に上った。内訳は、中心視力障害が56%、眼球運動異常が40%、視野欠損が28%、視覚性注意障害が27%、視知覚障害が5%。眼検査で正常と判定された患者は27%(1,033例中281例)にすぎなかった。
発症1週間以内の視覚評価は可能
Rowe氏は「急性期脳卒中患者は視覚障害の新規発症率と有病率が極めて高く、生存者の半数以上で視覚に問題が認められた。視覚障害には個別に調整可能なさまざまな治療選択肢がある。発症早期に視覚評価を行っておけば、早期の治療開始が可能になり、一般的なリハビリテーションによって視機能が改善する可能性もある。視覚スクリーニング・評価は脳卒中発症72時間以内に実施可能で、発症直後に評価不能な患者でも大半は1週間以内に実施可能なことが示された」と指摘している。
(あなたの健康百科編集部)