日本では高齢男性の8人に1人、高齢女性の5人に1人が独り暮らしであると推計されている。高齢者の独り暮らしではさまざまな問題が生じることが想定され、健康を害するリスクが高いといった報告もある。しかし、東京都健康長寿医療センター研究所による研究の結果、健康を害するリスクは「独り暮らし」という居住形態ではなく、人とのつながりが乏しい「社会的孤立者」で高いことが明らかになった。研究の詳細は米医学誌JAMDA(2019年4月15日オンライン版)に掲載されている。
高齢者の健康を維持するコツは「人とのつながり」
schedule 2019年04月24日 公開
居住形態と人とのつながりにより4グループに分け健康状態を調査
研究は、2015年に板橋区で行った健康調査「お達者健診」に参加した、健康上の問題がない高齢者を対象に行われた。400人の高齢者を「居住形態(同居/独り暮らし)と「社会的ネットワークの密度(人とのつながりが多い/乏しい)」を組み合わせて4つのグループに分け、2年後の健康診断における健康状態の変化を検証した。
「人とのつながり」については、親族・友人との交流範囲や、困ったときに相談できる親族や友人の範囲を点数化できる「Lubben Social Network Scale」という尺度を使って、得点が低い例(下位25%)を人とのつながりが乏しい群に分類した。
研究の結果、「同居で人とのつながりが多いグループ」を基準にした場合、「独り暮らしで人とのつながりが乏しいグループ」と「同居で人とのつながりが乏しいグループ」では健康障害リスクが高かった(図)。一方、「独り暮らしで人とのつながりが多いグループ」では、健康障害リスクはそれほど悪化していなかった。なお、要介護認定率については、同居の有無にかかわらず、人とのつながりが乏しい場合に高リスクとなることが示されている。
図. 居住状態と社会的ネットワークの密度別の健康障害リスク
(プレスリリース資料)
つまり、高齢者の健康維持においては、同居/独り暮らしという居住形態よりも、人とのつながりがあるかないかの方が重要ということになる。
一方で、健康状態が悪い高齢者の独り暮らしは、健康状態をさらに悪化させる可能性が報告されている。したがって、健康なうちは人との交流を楽しみながら生活し、健康状態に不安を覚えるようになった場合には、サポートが得られる住環境を求める必要があるといえそうだ。
(あなたの健康百科編集部)

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