がんに自律神経が影響、心を平穏に保とう
2019年07月10日 06:00
ストレスはがんの重要な原因の1つとされるが、そのことを裏付ける研究成果が岡山大学大学院細胞生理学分野教授の神谷厚範氏らのグループによって発表された(Nature Neuroscience 2019年7月8日オンライン版)。乳がんの内部に入り込んだ自律神経が多い患者では生存率が低いことを明らかにしたもの。今回の研究を踏まえ、同氏は「心を平穏に保つことが、がんの抑制に大切かもしれない」と述べている。
自律神経ががんの内部に入り込むことを突き止める
ストレスは自律神経の乱れにつながることが広く知られている。研究グループによると、慢性ストレスはがんの進展を加速させることが示されており、自律神経の変化ががんに影響する可能性があるが、がんの内部に自律神経が入り込むかどうかはよく分かっていなかった。
今回研究グループは、乳がんの増大に伴って、実際に自律神経(交感神経)が乳がんの内部に入りこんでいることを突き止めた。また、乳がん内部の交感神経の密度が高い人は低い人に比べ、生存率が低いことも明らかにした。
「神経治療」の開発につながる成果
さらに、マウスを用いた実験で、乳がん内部の交感神経の遺伝子を操作。交感神経を刺激すると原発がんが増大し、転移も増えたのに対し、交感神経を除去すると、原発がんや転移の増大は抑制された。
研究グループでは、今回の成果は、がんの内部の自律神経を操作することでがんを治療する「神経治療」の開発につながるものだと展望している。また、ストレスなどによる心の状態の悪化が、がんを進展させうることも明らかになったとし、心を平穏に保つように呼びかけている。
(あなたの健康百科編集部)