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看護師の卵40人の150日間に迫る

 2019年10月25日 06:00

 フランス・パリ郊外を舞台に、看護師の卵たちが修行に励む姿を追ったドキュメンタリー作品『人生、ただいま修行中』が、11月1日から新宿武蔵野館他で順次、全国公開される。過酷な労働環境にもかかわらず、心身を患う人々のために働く道を選んだ40人の若者たちの150日にわたる奮闘と成長の記録が収められている。また、公開に先立ち来日したニコラ・フィリベール監督が現役看護師や看護学生たちに行った特別授業や、国内外で活動経験を持つ現役看護師らによるトークショーなど、関連イベントの様子も併せて紹介する。

インターンシップで実際の診療現場へ

©️Archipel 35, France 3 Cinéma, Longride -2018

 本作の舞台は、フランス・パリ郊外にあるクロワサンシモン看護学校。主人公は、年齢も性も、国籍も出身地も異なる生徒40人だ。看護師としての心構えに始まり、適切な手洗いの仕方や注射器の取り扱い方、患者に対する介助法などの実践的な治療技術に加え、患者や家族、想定外の場面に遭遇した場合の対処法に至るまで、次々とレクチャーを受ける。

 やがて彼らはインターンシップを通じ、心臓病の病棟や末期がん患者の緩和ケア病棟、精神科病棟など、実際の診療現場で経験を積んで行く。マネキンではなく生身の患者を相手に採血や点滴、抜歯やギプスカットといった医療行為を実践するものの初めはうまくいかず、患者に苦悶の表情を浮かべられてさらに焦る姿もカメラは追う。

 しかし、彼らの前に立ちはだかるのは、テクニカルな面の難しさだけではない。職場の人間関係や患者とのトラブルというさらなる試練を前に、時に傷つきながらも前に進もうともがく。そして迎えた個人面談の場で、心の内を語り始めるのだったー。

©️Archipel 35, France 3 Cinéma, Longride -2018

 フィリベール監督が東京で「特別授業」

 日本での公開を前に、フィリベール監督が来日。看護教育の4年生大学である聖路加国際大学(東京都)で、看護学生や現役の看護師などを対象に特別授業が行われた。

 まず、同監督は、自身が2016年に肺塞栓症で集中治療室に入院したことが本作のきっかけとなった経緯を披露。「看護職は、本当に大変かつ必要不可欠な職業でありながら、軽視されがちな傾向にある」と述べ、看護師への敬意を表するためにドキュメンタリー映画の製作に踏み切ったという。

 また、看護師ではなく看護学生を主人公とした理由について尋ねられると、「看護業務の大変さ、複雑さ、身に付けるべき知識の膨大さは驚くべきもの」と前置きした上で、そうした「苦労の道のりを、学生の成長のプロセスを追うことによって観客の方々に分かっていただけるだろう」と説明。

 加えて、「学びの場には必ず、不安、ためらいがあり、撮影対象が感情的になる瞬間など、感動的なシーンが生まれます。また学生たちは、学ぶことに前向きで、希望を持って取り組んでいる。そういった学びの姿勢ほど美しいものは他では撮影できないと思う」と語った。

なぜ、看護業界に目を向けるべきなのか?

 来年(2020年)は、近代看護教育の母フローレンス・ナイチンゲールの生誕200周年に当たり、「国際看護師・助産師年」にも制定されている。こうした中で、国内外を舞台に活動してきた現役看護師2氏によるトークショーも開催された。1人は、今年のフローレンス・ナイチンゲール記章を受賞した訪問看護師で認定NPO法人マギーズ東京センター長の秋山正子氏。もう1人は、オーストラリアの医療施設や国境なき医師団の一員として活動してきた看護師の白川優子氏。

 訪日外国人が増える昨今、新宿エリアで訪問看護活動を行う秋山氏は「通訳ボランティアを置かないと難しい場面も増えてきた」と報告。その上で、「多種多様な人を相手に、どのようにして一番気にかかっていることを引き出していくか。言葉や人種を超えて相手の痛みに寄り添える看護師を目指すことが大事」と、看護師としてのモットーを話した。

 一方、白川氏は「看護師は病院で信頼される存在となるまでに、さまざまな奮闘や葛藤を経験し、悩み、苦しんで、乗り越えている」と看護師の実状を訴えた。また、医療関係者に対して、「看護学生を受け持つ病院が見つからないこともある。病院で働いていて、受け持ち看護学生の声がかかったら、ぜひ受け入れの協力をしてほしい。実習で受け持った患者さんは忘れられないし、学生にはまだ資格はないけれど一生懸命やる。それを頭に入れておいてほしい」と理解と協力を求めた。

 世界保健機関(WHO)によると、世界の看護師・助産師は2030年までに900万人不足すると推計されており、昨年からは看護師への関心を深め、地位向上を目指す世界的なキャンペーン「Nursing Now」が展開されている。本作を通じて看護業界への理解が深まり、過酷な労働環境の改善が進むことに期待したい。

映画『人生、ただいま修行中』
11月1日(金)新宿武蔵野館他、全国順次公開

監督・撮影・編集/ニコラ・フィリベール『ぼくの好きな先生』
原題/Each and Every Moment
日本語字幕:丸山垂穂/字幕監修:西川瑞希 製作年/2018年
制作国/フランス
上映時間/105分
配給/ロングライド
公式サイト:longride.jp/tadaima/

あなたの健康百科編集部

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