パーキンソン病を食事で予防?
2019年10月30日 06:00
難治性の神経変性疾患として有名なパーキンソン病を食事で予防できるようになるかもしれない。順天堂大学の研究グループの実験によると、パーキンソン病を発病するように作成されたモデル動物に、植物油などに含まれるリノール酸を与えたところ発病が抑えられた。研究グループは「パーキンソン病が栄養学の観点から予防できる可能性を示した成果」としている。詳細はProc Nail Acad Sci USA(2019; 116: 20689-20699)に掲載された。
リン脂質膜の組成変化が引き金
パーキンソン病は、脳内のドパミン神経が変性することが原因となり運動機能や認知機能などに障害を起こす。最近の研究では、発症の約20年前から神経細胞中の蛋白質「αシヌクレイン」が凝集することが分かっており、これが阻止できればパーキンソン病が予防できると考えられている。
同大学大学院神経学教授の服部信孝氏、助手の森聡生氏、同大学院パーキンソン病病態解明研究講座准教授の今居譲氏などの研究グループは、パーキンソン病の原因遺伝子の1つであるPLA2G6 に注目した。ショウジョウバエに対しこの遺伝子が働かなくなるようにゲノム編集したところ、加齢とともに細胞膜やシナプス小胞を構成するリン脂質膜が薄くなっていることが明らかになった。
研究グループは、リン脂質膜が薄くなることでシナプス小胞のサイズが約80%に縮小してαシヌクレインが膜表面に結合できなくなり、凝集化を起こすと考えている。また、リン脂質膜の菲薄化が細胞内小器官の1つ小胞体にストレスを与え神経細胞死を増やすことも分かった。
さらに、細胞膜の組成変化を抑える作用を持つリノール酸をこのショウジョウバエに与えたところ、リン脂質膜の菲薄化が抑制され、αシヌクレインの凝集化や神経細胞死が見られなかった。
研究グループは「ヒトとショウジョウバエでは生体膜の組成が違うことから、ヒトでも同様の現象が見られるか、さらにパーキンソン病が食事で予防できるかについて研究を進めたい」としている。
(あなたの健康百科編集部)